今年もよろしく






「うっわさむ…っ」
「……っ」

部屋を出た瞬間、小堀と森山は寒さで体を縮こまらせた。


海常の元レギュラーメンバーで、初詣行こう!!なんて言い始めたのは黄瀬で、それに一も二もなく賛成したのが森山、それと早川。

それに伴い、どうせなら、という理由で森山は小堀の部屋へと泊まっていた。どうせなら、年越しを好きな人と…なんてベタすぎるが、実際、それを考えたのは森山と小堀だけでなく、笠松は黄瀬の部屋に、早川は中村の部屋に、それぞれ泊まりの約束をこぎ着け、それぞれに2人揃って待ち合わせの集合場所へと集った。

顔を合わせた瞬間に森山がリア充リア充騒ぎ立てたが、それに黄瀬が開き直ってバカップルを全開にする。「羨ましいでしょ?」なんてドヤ顔をかました日には悔しがった森山と顔を真っ赤に染め上げた笠松に同時に蹴りを入れられた。

その様子を微笑ましく眺めていると、2人にもみくちゃにされた黄瀬が流石に降参、と助けを求めてきた。
苦笑しながら森山を宥めに向かうと、思ったより簡単に森山は抵抗するのをやめた。

そんな先輩と後輩を尻目に、早川と中村はというと、ナチュラルにいちゃついていて、中村なんかあからさまに「あんな人たち知りません。全く関係なんてありません」という思考を放っていて、森山が今度は中村を標的に弄り始める。
早川が純粋なのをいいことに早川の同意の上で2人の恋愛を赤裸々に語るその様は一種の羞恥プレイだ。

流石に哀れになってきたのか、笠松が小堀に様子を窺うようにして「とめないのか?」と言う。
小堀は「止めないよ」と言った。

森山はなんだかんだ言って寂しがり屋だ。
卒業以来何回も会っていない後輩たちに対して、行き過ぎながらもスキンシップを取るのは会えて嬉しくて仕方ないからなんだろう、
そう独り言みたいに笠松に聞かせると、なんとも言い難いような顔でふーん、と納得したような納得行ってないような顔で返された。

神社について、二礼二拍手一礼。なんて説明をすれば、それに同級生や後輩たちが倣うのがなんとなくおかしかった。
女の子との運命を願って500円玉を投げようとする森山の手を止めて、必要ないよ、と言うと微妙な顔をされた。
縁を願うなら5円で十分だ。

因みに、近くに立て札があり、15円はあまりないが、25円、35円を投げるのには理由がある。「二重三重のご縁がありますように」らしい。

近くにおみくじも置いてあり、森山が「カモン!運命の人
近くにおみくじも置いてあり、森山が「カモン!!!!!」とやたら力んで引いていた。結果は大吉らしい。待人に関しては「既にある」。
森山は盛大に首を捻った。待人が俺のことだといいな、なんて思いながら、財布におみくじを放り込む森山を眺めた。

他には今年大学受験を控えた黄瀬が引いた位で特に気にもしてない面々はばらばらに動き始める。お守りを買いに向かった笠松はそれなりに黄瀬のことが心配らしい。
そうは言いつつも、黄瀬はモデル業に集中したいということで有名な大学に推薦を貰えそうな所を蹴って進学に堅い大学を受けるらしい。それと知っていて買いに行くのは万が一に備「なー…小堀ぃ」
「ん?」

「………今年もよろしくな?」

覗き込んでなんとも言えない表情で森山がそう言った。

「うん、もちろん」




「こーぼりぃ!」
「はいはい」

森山が小堀の背中に体重を預けて叫ぶ。

あの後。
甘酒を飲み過ぎた森山はハイになって足取りも覚束ない。
途中までは後輩たちも支えてくれていたが、流石に関係のない小堀の家まで来させるわけにはいかない。
笠松はほっとけ、自業自得だ。と言い放ったがさすがにそういうわけにはいかないだろう。

ただでさえ容姿はいいのに、というのは俺だけの理由だ。
言えば早川や黄瀬あたりは同意してくれるだろうが。

引きずるように部屋の中に連れ込むと、小堀、と譫言のように森山が呟く。

「あ」
「ん?」
「ベッドだーぁ」

不意に顔を上げた森山が小堀のベッドを見つけるや否やその布団にぽすん、とダイブする。
そのまま泳ぐようにベッドの中に潜り込んだ。

「小堀ぃ…、いっしょ、寝よ?」
「………」

寒いのか、眠いのか。
上気した頬と潤んだ瞳でその言葉は毒だ。

寝るだけ、な。
と自分に聞かせるように呟いて小堀は自分の為にとあけてくれた隙間に身体を滑り込ませる。

そうすると、甘えるように胸の中心に森山が額を埋めた。
その両腕が、小堀の胴体に回る。

「こぼぃ」

えへへ、あったかいな。と森山が笑う。可愛くて昇天するかもしれない。

「森山、森山…」
呼べば、森山が顔を上げる。
小堀はその両頬に手のひらを当てて、少しだけ引き上げる。

ちゅ、と軽い音を起てて唇が合わさった。

ふにゃ、と森山が笑う。

「すき、」

回らない舌でそれだけ言うと、不意に電池が切れたように森山の意識がなくなる。

「ええ?」

目を見張れば、すーすーと規則的な吐息。
生殺しか、と小堀の口元に苦笑が浮かぶ。


今年もよろしくな、


小堀はそう呟いて、眠る森山の身体を抱き寄せた。





あとがき

あけましておめでとうございます。
遅くなりましたが、お年賀ということで(・ω・`)
駄作乙





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