安定剤




※大学生パロです




今日は、散々だった。

朝から犬のふんをふんずけるし水を撒いていたおばさんに水をかけられる。よりによって嫌いな教授の苦手科目の授業で当てられた上に教科書を家に忘れてきていた。そういや机の上に出しっぱなしだった。
バイトに行けばいつもなら有り得ない失敗をやらかしお客様にも先輩にも迷惑をかけ、そのバイトが終わって携帯を開けばサークルの先輩からちょっと出てこいと命令口調の酒のみの誘い。



「……………」

早く帰って休みたい。

日向は大きく、大きく溜息を吐いた。


何故だろう。

帰路に着くとどっと疲れが押し寄せて来る。

早く、早く

と焦りを覚える程、ふらふらと呑んでもないのに千鳥足で、
借りているアパートの部屋を目指す。


やっと行き着いた自室。

同居人の伊月は遅くなるとか言っていただろうか。
もう記憶が曖昧で覚束ない。

ドアノブに手を掛けると重さをいっさい感じずにドアが開いた。

――――鍵

ざわっと、鳥肌が立った。

鍵が閉まっていない。

部屋をでる際に確かに鍵を掛けたのに。

静かに部屋へと入ると、微かに甘い匂いがした。

疲れた身体に、その温かい空気が染み入る。

やがて、やっと彼の帰宅に気が付いたかのように、台所からパタパタと音がした。

「日向!お帰り!!遅かったね。今日の予定、早く済んだから先に…日向?」

台所から顔を出し、日向の姿を確認した伊月が、玄関に立ち尽くす日向に寄ってくる。

「日向?大丈夫?」

「…、おぅ………」

訝しそうに空返事を返した日向をのぞき込み、伊月は日向の唇に触れるだけのキスをする。

「お帰り、日向」

……あぁ、

「…ぇ……、あ、……ちょ……っ、…日向!!?」

途方もない安堵感に襲われて、日向は伊月の胸の中へと崩れ落ちる。

「……はぁ、」

自分よりもガタイのいいその身体に抱きしめるように倒れ込まれ、動けない、と伊月は嘆息する。

彼の耳元を擽る吐息に身動ぎすると、ん、と小さな声が聞こえた。

「……伊月……」

眠っているようだから、きっと譫言。

だけど、それが凄く愛しく感じた。



(…さて、どうやって運ぼうか)





あとがき

お久しぶりです!
って言ってみたはいいけどそこまでなかったですねwww
やたら日月を書きたい衝動に駆られ、でもネタがない、ってことで昔書いた別ジャンルの夢小説をアレンジさせていただきました!
いや、ネタはあったんだけど気力の問題ですすいません、日月の夫婦の話とか想いが通じた直後の話とか書きたいです!←書け






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