案内されたお風呂は、まるで旅館のような広さを持っていた。
(ていうか……旅館なのかな)
落ち着かない私は早く汚れを落とし、お風呂場から出る。
するとひの依さんがとても華やかな色とりどりの着物を持ち、立っていた。
「コレを着てくんなまし」
その言葉に驚いて首を横に振る。
『着方がわかりません…!』
口をパクパクして必死に意思を示す。
すると、ひの依さんが驚いた。
「ぬし、声出ないんでありんすか」
その言葉に力強く頷く。
「そな……えらい大変でありんしょう」
それにまた頷けば、ひの依さんは目を伏せた。
どうしたのだろうかと私が慌てると、すぐに顔を上げてくれる。
すると女の私でもドキッとしてしまうくらいのはにかむ笑顔がひの依さんにあった。
「一緒に頑張りましょ。あたし、貴女と友達になりたいわ」
急に話し方が変わったひの依さんに驚く。
するとひの依さんは苦笑い。
「さっきの話し方、どうしても慣れなくて……此処には十の頃に入れられた身なんだけど、まだまだね」
(入れられた……?)
「私がさっき呼ばれたんだから、きっと同じ部屋ね!
貴女みたいな信じられるこが来てくれて嬉しい…!」
ガバッと裸の私に抱きつく。
固まる私……。
「あ…っああ、ごめんなさい!
着方が分からないのかしら。着せてあげるわ」
そういうなり、てきぱきと華美な着物を着せていく。
人形のようにされるがままに立つ私は、嫌な予感がしていた。
この美しすぎるほどに派手な着物
それに……独特の言葉。
――まさか、ここは遊廓じゃ……
その時、目の前の戸がスーッと開いた。
→二の幕へ
08.07.20 tokika