samurai7 | ナノ
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「大変だぁ!これからおサムライ様が決闘なさるだ!!」
「なんだってえ!?」
「いったい誰が…!」
「カンベエ様とキュウゾウ様だってよ!」


決闘当日、カンベエが早朝の広場を借りることをギサクに伝えたことにより、近くでそれを聞いていた村人ゴサクが驚き、皆に知らせようと大声を上げ、まだ眠る者達を叩き起こすことで一日が始まりを告げた。
篝火が必要な程薄暗い広場の周りには直ぐに人が集まり、片隅に立っていたユメカの元へ村娘三人が慌てて駆けてくる。


「ユメカ、どういうことだべ!なしておサムライ様同士が闘うだ!?」
「喧嘩か!?」
「仲間割れでもしたんだべか!?」


あまりの剣幕にユメカも驚きながら、落ち着かせようと両手を振る。


「違うよ、落ち着いて。この闘いは、二人が仲間になる前から決めてた約束なんだよ」
「仲間になる前の…?」
「うん、此処での戦が終わったから、二人は闘うの」
「…………」


全員が納得できないように眉をしかめる。


「そんなのおかしいべ!今は仲間だから闘わなくていいじゃねぇか」
「んだんだ」
「ユメカはそれで良いだべか?キュウゾウ様心配じゃねぇべ?」


「正直……心配じゃないっていったら嘘になると思う。でも二人が決めたことだし、私はこういう未来を希望してたんだ」


村で待つ――本来彼が言い残した言葉が現実となり、決着が着くことを。



「ふたりを信じてる。だから大丈夫だよ」



ユメカの言葉を聞いた村娘達は口を引き結び「ユメカがそう言うなら……」とそれぞれ思い直す。
会話の直後、辺りが少しずつ明るくなっていることにユメカは気付いた。
風車小屋でその時を静かに待っていたカンベエが、すっと立ち上がり外へと足を向ける。
朝日が昇る方角をユメカは見て息を呑む。色付く景色の中に見えたのは此方にゆっくりと向かってくるキュウゾウの姿だった。

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