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生きて……ほしかった。
みんな一緒に
帰ることが出来ればよかった――。
そんな
運命に逆らった未来を私が望むのは……
いけないことですか?
う た か た学校帰り、夢香はいつもと同じ寮への道を歩いていた。
一人で帰れば自然と空想の世界に浸るもので、
大好きなアニメ、SAMURAI7の事を考える。
農民達が七人のサムライを集め、野伏せりと戦うお話――SAMURAI7。
今までこれ程好きになったアニメは無いんじゃないだろうか。
内容も面白かったし、個性溢れるサムライ達もそれぞれ魅力的で、かっこよかった。
(でも、沢山死んじゃったのがな……)
結果的に農民達は勝った。自由を手に入れ、平和が約束されただろう。
しかし、心残りなのがその戦いに身を投じて命を落としたサムライだった。
キュウゾウ。
一番好きなサムライ。
二刀流を扱い、余り多くを語らない彼は、カンベエとの決着をつけることなくこの世を去った。
あんなに強かったのに……だ。
大好きなキャラなだけにショックは大きかった。
ヘイハチ。
いつも笑顔で、何よりも米が大好きなサムライ。
心の内に秘めた闇は大きいが、彼なりに今回の戦で自分の過去と戦っていた。
生きて帰ることができれば、
大好きなお米を仲間と一緒に、笑顔で食べることが出来ただろう。
心から笑う彼を、もう一度見たかった。
ゴロベエ。
一行に欠かせない、ユーモアが溢れる存在。
一番優しく、温かい人だった。
あんなに早くいなくなってしまうなんて信じられなかった。
キクチヨ。
何かと問題を起こす常習犯だったが、それがまた良かった。
憎めないキャラで、大きい機械の形とは裏腹に愛嬌を持っていた。
だが彼もまた、最後は立派なサムライだった。
……その結末はとても悲しいものだったが。
何故ならコマチとの大切な約束を守りきることができなかったからだ。
ふたりには幸せになってほしいと強く願っていたため、コマチの泣く姿を見た時は、自分の涙を抑えることができなかった。
(う……やばい。今になってまた泣けてきた!)
涙が溜まった目を拭う。
夢香は物語に入り込みやすい自分に苦笑しつつ息を吐き、悲しい思考を切り替えようと、他のサムライのことを思い浮かべた。
カツシロウ。
サムライを目指した真っ直ぐな彼は、本物の戦で自ら掲げた理想との違いに苦しみ沢山のことを学んだ。
辛い出来事も蘇るが、同じサムライであれば誰も彼を責めないだろう。
何より、一番人間らしく自分に近い立場に思えた。
自分があの場にいたとしたら、カツシロウのように人を殺めるのは躊躇い、農民は助けたいと苦しみもがくだろう。
シチロージ。
カンベエにとって、唯一無二の存在。
帰る場所がある彼が生き残ってくれたのは、せめてもの救いだった。
ユキノと幸せに暮らす姿を想像するだけで、幸せになれる。
カンベエ。
サムライと農民を統括した、真のサムライ。
乾いているようで一番熱かったようにも思える彼は、何を考えているのか分からない奥が深い人で、行動全てに皆が一目置いていた。