samurai7 | ナノ
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「これからは三交代で各自待機とする!」


カツシロウの指示に、農民達は頷いた。闇に包まれたカンナ村は、再びカツシロウと農民達の手により要塞化されたのだ。

師を見限り一人で飛び出したその後、ユメカにカンナ村に行ってほしいと頼まれたカツシロウは、結局村へと戻ってきていた。一刻も早く別の戦に出る気でいたが、ウキョウがカンナ村に向かっているという言葉はどうしても頭を離れず、確かめに行く程度の寄り道はいいだろう、と考えたのだ。
しかし村に着いてみれば、火炎機能を搭載した機械の兵士達が、まさにカンナ村を焼き払おうとしているところだった。
火を放つ前に始末し、皆に知らせるべくその骸を片手に広場へ向かうと、既に其処には農民達が集められており、都を迎え入れる準備をするという名目を並べるウキョウのサイボーグ用心棒――ドリルパンチ男が兵を従え立っていたのだ。


以前虹雅峡でキララを攫われた時に手合わせしたサイボーグ用心棒。当時実戦は初めてだったため、苦戦した挙句負けてしまったが、戦いを重ねた今となっては赤子の手を捻るようだった。
瀕死のドリルパンチから、カンナ村を燃やす手筈になっていることを聞き出し、ウキョウがこの村を本気で消そうとしていることに確信を得た今、再び都を迎え撃つべく村を要塞化する必要があった。


「私の存在が必要……か」


何度も血に濡れた右手を見つめ、ユメカに言われた言葉を思い出す。
自分がカンナ村に戻らなければ、野伏せりから救った村事態が無くなっていただろう。ユメカに導かれたといっても良かったが、此処に来ることを選択したのは自らの意思だ。
自分にも成せる事がある。病的に戦を求めていると理解していたが、此処でまだ戦が出来ることに血が沸く感覚を抑えることは出来ず、右手を固く握り締めた。













カンナ村の復興手伝いをする居残り組みのシチロージ、ヘイハチ、ゴロベエはリキチを連れ、カツシロウと入れ違いに蛍屋へとやって来た。
待ち望んでいたリキチとサナエの再会。しかしサナエは先代の天主に心を捕らわれたままで、リキチは困惑することになる。
時間をかけて、サナエの心を解放していくしかないという現実を目の当たりにしたリキチは、ぐっと悲しみを堪え、しかし多少強引にカンナ村へ連れ帰ることを決意した。


カンベエ達と合流してのち、先にミズキをホノカの元に送り届けるため、蛍屋を出立し、式杜人の里を訪れた。
無事姉妹を会わせると、ミズキは姉と共に式杜人の里に残ることを選択する。
その際式杜人はカンベエ達が成そうとすることを知り、都から解き放たれる好機とばかりに武器の備えを渡してくれた。砂漠を渡るための運搬船までも譲り受け、出来る準備は万全に整え砂漠へと繰り出した。


道すがら何も無いはずの砂ばかりの地。しかし不自然な野伏せりの残骸を見つける。散らばった破片は刀によるものではなく、都の主砲によるものだった。
ウキョウの天下取りに利用されている野伏せり。その姿は無残としか言いようが無かった。
周りを見渡せば近くに斬艦刀が砂に埋もれていた。斬艦刀は野伏せりの武器だが、人を乗せ、単体で動くことのできる艦でもある。
運搬船よりも早く移動できる斬艦刀を利用することにしたカンベエ達は、斬艦刀の修理とこれからの策を練るためこの場に留まっていた。


星空の下、ヘイハチが修理する斬艦刀の傍で会話が交わされる。


「キクチヨは幸せ者だな」


ゴロベエが頬の傷を笑顔で歪め、優しい目線をキクチヨに向ける。座ったまま寝息を立てるキクチヨの膝の上には、安心しきって眠るコマチの姿があった。


「ほんとですよ。プロポーズとは見せ付けてくれます」


ヘイハチも微笑ましいとばかりに恵比須顔で答える。
いよいよ都に乗り込むという会話になった時、ゴロベエが血気盛んに「命、売りましょう」と言ったことで、キクチヨも「おう!オレ様も売ってやるでござる!」と便乗したため、その言葉を聞いていたコマチは、死ぬのは嫌だと言って泣いてしまった。

キクチヨにしてみれば本当に死ぬつもりはなく、男の心意気を口にしたつもりだったのだが、コマチを泣かせてしまった責任を感じ、安心させるために自慢の家系図をコマチに託し、受け取りに必ず戻ってくるという約束を交わした。

キクチヨから家系図を受け取ったコマチは頷き、「おっちゃまもオラとひとつ約束するです。オラがおっきくなったら、オラの婿になれです」と予想外の大告白をしたのだ。
そのストレートな言葉に胸を打たれ、キクチヨは嬉しさのあまり機械とはいえ涙しながらその約束を交わした。
戦が終われば、キクチヨには未来が待っている。帰る場所が無いゴロベエとヘイハチにとって、それはとても羨ましく思えた。


「主機関はヘイさん、攫われたであろうユメカはキュウゾウに任せるとして、カンベエ様、我等いかに攻めます。果たして策は……」


シチロージが副官だった時のように、カンベエに全ての指示を仰いだ。
するとカンベエは間も置かずに口を開いた。


「無い」


カンベエの言葉は予想外のもので、皆の心に動揺の波紋が起こる。
これまで一度だってカンベエは考えなしに行動することは無かった。だからこそ、きっと今回も何か策や勝算があるのだろう、と自然と思ってしまっていたのだ。


シチロージが目線を落とした。


「無い、ですか」

「今度こそ、死が待っている」


これまでと変わらぬ静かな声に、茶を用意していたキララがたまらず目を伏せる。
この戦で、失いたくは無いのだと、キララの心が悲鳴を上げていた。しかしそっと気持ちを隠すように、茶を差し出した。カンベエは受け取り、目線をキララへ向ける。


「もう遅い。そなたは休め」
「お気遣いなく。御用があれば呼んでください」


離れていたくない気持ちを気丈に押さえ、キララが微笑みを向けこの場を離れる。


「良い子ですな」


気持ちを察しているシチロージが、カンベエに呟きかける。カンベエはまた目を伏せ、茶をすすった。

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