samurai7 | ナノ
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辺り一面砂漠の世界。
風によって舞い上がる砂塵を浴びながら、ユメカはヒョーゴが出てくるのを落ち着かない気持ちで待っていた。


野伏せりの浮遊要塞が今、目の前にある。
先程ヒョーゴは「伝えることがある」と言い、ユメカが付いてくることを拒み、中へと入っていった。
キュウゾウはというと、そのヒョーゴに付いていかず
少し離れた所で目の前に広がる砂漠を見据え、立っていた。


ふたりきりの状況だが、居心地は決して良くは無い。
ここに来るまで、ユメカが会話をしたのはヒョーゴだけだ。
お陰でユメカはヒョーゴと少し打ち解けたようにも思えるが、肝心のキュウゾウとは一言も言葉を交わしていない。
キュウゾウが自ら何かを話すはずもなく、風の音だけがやけに耳についていた。


「…………」


ユメカが伺うようにキュウゾウを横目で見る。
すると前を見据えるキュウゾウの瞳はじろりとユメカへ向いた。
心臓が飛び跳ね、ユメカは慌てて視線を逸らす。


(うう……)


話したいことはある。もっと近付きたい気持ちも正直ある。
しかしその気持ちを恋心と認識してしまったユメカは、意識し過ぎて逆に行動に移せなくなっていた。


こんなんじゃ駄目だ、とユメカは目を強く瞑る。
意を決し、今度はちゃんとキュウゾウの方を見つめた。


「キュウゾウ!」


キュウゾウが先程と同じく視線を向ける。
視線が合うことでユメカは頭が真っ白になりかけるが、言葉を続けた。


「この前……ありがとう。カンベエ達のところに連れて帰ってくれて」
「…………」
「それから、ごめんなさい。私すっかり寝ちゃって……」


キュウゾウの視線はユメカから離れ、再び前を見た。
無視されるのかと思いきや、ずっと閉じられていたキュウゾウの口が開く。


「……構わぬ」


ユメカは短い会話が出来たことが嬉しくなって頬を紅潮させた。
少しのことが、本当に嬉しい。
その時、複数の機械音が鳴り響いた。
自分達のいる所に影が差し、それは早い速度で次々と流れていく。
驚いて上空を見上げれば、沢山の野伏せりが一つの方向へと向かっていた。


雷電型の野伏せりを実際に初めて見たユメカは、あまりの大きさに恐怖を覚える。
こんなにも大きい物に、農民達は虐げられていたのか。


「行くぞ」


声が掛かった後ろを振り向けば、身の丈以上もある銃を抱えたヒョーゴが立っていた。
ユメカは浮かれていて忘れていたが、これから起こるであろう恐怖を思い出す。
眉根を寄せたユメカ。一方キュウゾウは銃を鋭い視線で一瞥する。


「ヒョーゴ……銃、使うの?」


ユメカの問いに、ヒョーゴは口角を吊り上げた。


「ああ、サムライとて、時代に付いてゆかねばなるまい」
「…………っ」


ユメカが訴えるようにキュウゾウを見た時には、彼はもう背を向け歩き出していた。

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