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確信を持った夢香は、高ぶる気持ちから名前を聞こうと男の方を見る。
しかし異変に気付き、言おうとした言葉を飲み込み違うことを口にした。
「なんか……震えてませんか?」
よく見なければ分からない程に、小さく痙攣しているようだった。
その問いに返事は無く、彼は完全に眼を閉じてしまう。
「…………」
お節介とは思いつつも、もしやと思い彼の額に手を当ててみた。
「熱い…!」
熱があるのではないかという勘は的中なうえ、余りの熱さに驚いた。
もしかしたら四十度近く出ているかもしれない。
(どうしよう…!)
焦った夢香は彼の体に手が触れる。そして更に驚いた。
(冷たい――!)
額とは反対に、凍るような冷たさに驚く。
冷たい雨で、既に体温は奪われてしまったのだろう。
このまま放っておいたら危険だ。
「ねえ…!雨が遮れる場所に移動しようよ」
彼の反応は無い。
固く眼を閉じ、小さく荒い呼吸を繰り返す。
その様子に夢香はくしゃりと泣きそうな表情を浮かべた。
「―――っ」
怖くなって咄嗟にしがみつく。
助けを呼ぼうにも、他に人がいるとは思えない。
少しでも自分の体温で温められたらと、夢香は自らの腕を彼の体に回し、包むように抱きついた。
(本当に冷たい……
こんなんじゃ温まらないよ)
「キュウゾウ……!」
いつの間にか
夢香はそのまま眠りについていた――…
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06.03.05 tokika/加筆修正:09.01.24