samurai7 | ナノ
09
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マサムネの工房に戻ったカンベエ達一行は、
一緒に行動していなかった者に今日の出来事を話した。
ユメカが忽然と消えた今、これからどうするべきか。
だが直ぐに声が上がる。


「今すぐ探しに行くべきです!」


カツシロウだ。
それに続き、キララも頷いた。


「賛成です。私にも協力させて下さい。
この振り子はユメカさんに反応してくれるので、お役にたつと思います」


カンベエは首を横に振った。
なぜ!とカツシロウとキララが驚く。


「夜の街は色々と厄介になる。水分りの力を借りるのは夜が明けてからだ。
今から捜しに行くのは儂ら男衆だけとする」


キララはいてもたってもいられない気持ちだったが、
渋々納得しカンベエの言葉に頷く。
一方カツシロウも、感情が先走り冷静さを失っていたと自分を恥じ、落ち着きを取り戻した。
強い敬意のこもった瞳でカンベエを見つめ、どうするのか支持を待つ。
しかし、先にゴロベエが口を開いた。


「では、カンベエ殿とヘイハチ殿、
それにカツシロウとキクチヨと某が捜索にあたるということですかな?」


ゴロベエなりの気遣いから、連日サムライ探しでへとへとになっていたリキチを数に入れずに問う。
それにカンベエは頷いた。


「だが念のためヘイハチには残っていてもらう。
ヘイハチ、此処を頼む」


ヘイハチは一瞬片目を開けるが、
すぐにいつもの温和な表情に戻り頷いた。


「承知いたしました」
「では朝日が昇れば、見付からずとも一旦此処に集合だ」


ユメカの捜索にあたる者たちは、カンベエの言葉に頷き立ち上がる。
キララはユメカの無事を祈り、その者たちを見送った。
この場に残ったのは、マサムネ、リキチ、コマチ、キララ、ヘイハチだ。
ただ皆の帰りを待つことしかできないため、場の空気は重くなる。
しかしその空気を破り、ヘイハチが口を開いた。


「キララ殿」
「……はい、何でしょうか」


ヘイハチがずっと気になっていたことを問う。


「疑問だったのですが……。
ユメカはあなた達と同じ農民なので?」
「あ……いえ、ユメカさんは、私達が虹雅峡に来てからお会いした方です」


この言葉を聞き、ヘイハチに更なる疑問がうまれた。


「ならば何故行動を共に?」


その質問には、コマチが反応した。


「ユメカ姉さまは道に倒れてたですよ!
だからオラ達が拾ったです。
そんで起きてみたら記憶を失ってて、
行くとこ無かったから一緒にいるです」


でもオラ達の仲間です!と付け加え、少し涙をためる。
心配でたまらないのだろう。


「記憶喪失……」


驚いた様子でヘイハチは呟く。
キララは涙をためたコマチの頭を優しく撫で、それに頷いた。


「自分がどこから来たのか分からなかったので、過去を少し……でしょうか。
ですので、記憶が残るまで私達と一緒に行動をと思っています」
「そう……でしたか」


そんな風には見えなかったユメカ。
今朝方一緒に笑いあったことが、ヘイハチにはまるで遠い昔のことのように感じた。


ヘイハチもできることなら探しに行きたかった。
だがカンベエに此処を任されたためそれは叶わなかった。


ヘイハチを含め、ここにいる者達はただただユメカの無事を願っていた――。

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