samurai7 | ナノ
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(……痛い)


頭の痛さに気付き、ユメカは重たい目を開く。
すると眩しいほどの光が入り、きゅっと反射的に目を閉じた。
ゆっくりと再び目を開く。
すると、煌びやかな程に装飾された天井が視界に広がる。


「ここは……」
「あ、目が覚めた〜?」


自分の一言に返って来た声。
びくっと聞いたことのある声に体を勢い良く起こす。
すると頭に強い痛みが走った。


「……っ」
「あ〜駄目だよ、まだきみは寝ていないと。
テッサイが嗅がせた薬、副作用で頭痛が起こるみたいだからね〜」


ほんと酷いよね〜、とゆるやかなしゃべりと表情を変えずに言う。


「あ、自己紹介しなきゃね。
僕は虹雅峡差配の息子、ウキョウ。君はユメカくんだよね」


(私のこと知ってる……)


驚いてウキョウの顔を見れば、にこりと、感じの良い笑顔で返される。
しかし今後の彼を知っているユメカには、嘘のような笑みに見えてしまい怖くなった。


「何で知ってるのかって?
きみ、装飾屋で働いてたでしょ。そこで知ったんだよね〜」
「…………」


その言葉を聞き、視線を落とす。
そして更に驚いた。
自分が今着ているのは、フリルが施された淡いピンク色の洋服だったからだ。


「――!」
「ん?あぁ、安心して〜。
別に僕が着替えさせたわけじゃないから。
傍女のワーリャにやらせたよ」
「私の服は…!?」
「あんなものもう必要無いよ。君にはそうゆう可愛い洋服が似合うからね〜」


もしかして…!と思い髪に手を伸ばせば、
髪型は変わっていない。
リボンが無事ということは、指輪も無事だ。
心底安心し、息を吐いた。


(制服のポケットから場所を変えて良かった…)


「どうかしたの〜?」


ウキョウの言葉にユメカは慌てて首を横に振る。


「なんで、ウキョウ…様が私なんかをここに…?」


名を呼んだことに、ウキョウは機嫌が良くなったのが見て取れた。
まるで子供をあやすかのように、穏やかに言い聞かせる。


「それはね〜。ユメカくんは僕の夫人候補だからさ」


(ふ……じん?)


「ユメカくんの美しい姿。見てるだけで癒されるよね〜。
傍女じゃなくて、夫人にしたいんだ。
これってとっても名誉なことだよ」


頭を硬いもので殴られたほどの衝撃がユメカを襲った。
何をどう言ったらいいのか分からなくなり、黙り込む。


「ユメカくんはこれからのことを何にも考えなくて良いよ〜。
食べるのにも困らないし、欲しいものは何でもあげる」


そう言ったとき、扉の外が慌しくなった。
ドタドタと走る音。


「気付いたね」


ぼそりと、なんとも楽しそうにウキョウが小さく呟いた。
しかしそれはユメカに向けられた言葉では無かった。


「ごめんけど、ちょっと行ってくるよ。
大人しく待っててね〜」


ウキョウは部屋の扉を開き、出て行く。
その時、扉の外で控えていたテッサイと目が合った。
ばたん、と扉が閉まり
部屋にはユメカひとりが残された。


ああ、どうしよう――…。


→第九話へ
08.05.21 tokika/加筆修正:09.02.10

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