samurai7 | ナノ
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太陽が傾き始めた頃、建物に囲まれた場所で皆が無事を確かめる。


カツシロウがキララの手を離さずにいたため、大惨事は免れた。
キララから丁寧にお礼を言われたカツシロウは少しばかり照れていて
可愛いな、とユメカは微笑ましく眺める。
そして自分もキララの後にお礼を言った。


カツシロウが手を引いてくれなかったら、
ユメカの身体は今頃半分になっていたかもしれないのだ。


「ヘイハチ殿の策が功を奏したようだ。礼を申すぞ」
「いえ、お粗末さまでございました」


新入りの活躍と、カンベエの礼を受ける様子に
キクチヨが背を向け、けっ!と拗ねる。


「お主、よく踏ん張ったな十三歳」


随分性に合ってしまった十三歳との言葉に、キクチヨは肩を落とす。
しかしその後に続いたカンベエの言葉はキクチヨを喜ばせるには充分なものだった。


「礼を言うぞ」
「!!」


カンベエはそのまま、歩き出す。
皆もその後に続くが、キクチヨは後ろを向いたまま喜びを噛み締めているため気付かない。


コマチが今居ないことに気付いたユメカは、キクチヨを呼ぼうと振り向いて駆け寄った。
手を伸ばし、キクチヨに触れようとした時――


「御免」


耳元で男の声がしたかと思うと、
口元を布で覆われ、抵抗する間もなく
ユメカはすぐに意識を飛ばした。



直後、周りが自分を置いていってることに気付いたキクチヨ。
「おい!待ちやがれー!」とみんなのもとに駆け寄る。



「あれ、ユメカはどうしました?」
「んぁ?」


ヘイハチの問いに、質問の意味が分からないといった様子。


「ユメカはキクチヨ殿を呼ぼうとそちらにいきましたよ」
「見てねぇぜ」


その言葉に一同が驚く。
キクチヨの背後にはユメカの姿はどこにも無く、
夕日に染まった寂しい路地が広がっているだけだった。

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