samurai7 | ナノ
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「よっし!今日は頑張るぞ!」


昨日好きなことをして過ごしたユメカは、随分と体力を回復できたようだった。
朝日が昇ると同時に目覚めることができ、直ぐに決意を口にする。


身支度を整えていたその時、
ふとポケットに入れたままの指輪が気になり取り出した。


(簡単にポケットに入れてたりしたら、無くなっちゃうかもしれないよね……)


不安になるが良いことを思い付き、
キュウゾウから返してもらったハンカチを取り出した。
それを広げ、指輪を上に乗せて包む。


「うーん……これで無くなる可能性は減ったけど」


肌身離さず身に着けてたほうがいいかな。
そう思って更に考えれば、このまま身に付ける方法を思いついた。


(髪に結ぼう!)


癖のある長い髪を、下の髪を残す形でサイドから取り、
もともと持っていた髪ゴムで後ろに結ぶ。
その上に指輪を包んだハンカチを、しっかりと結びつけた。
鏡を見てみれば、丁度花が描かれた部分が表になっていて、
リボンと呼べるものになってくれていた。


(髪も邪魔にならなくなるし!指輪も安全だし!一石二鳥だ)


そんな風に満足した時、コマチの大きな声が響き渡った。


「大変ですー!」


ユメカは何事かと驚いて土間に顔を出す。
すると視界に入ったのはコマチがカンベエの手を取り、張り出し縁の方に引っ張っていく姿。
疑問に思い、ユメカも後を付いて行った。


「ほら、あそこ!喧嘩しようとしてるです!」


コマチの指差す先には、喧嘩どころか仲良く互いの背中に腕を回し、
清々しく朝日を眺めるキクチヨとヘイハチ。


「喧嘩ぁ?冗談言うなよ。なぁ、兄弟」


キクチヨはコマチに気付き、機嫌良さげに反応した。
一方ユメカは、なるほど!アニメであったシーンだ!と納得した。


コマチはその様子に「あれれです」と眉を寄せ、
カンベエは顎鬚を撫で、キクチヨを見る。


「まぁよい。キクチヨ、今日はサムライ探しにお前も来い」
「へっ?」


自分を必要とする言葉が向けられたことに驚き、キクチヨは面食らう。
だがヘイハチから「良かったですね、キクチヨ殿」と言われ、
いつもの自信満々の調子に戻って喜んだ。
しかし、すぐに肩を落とすことになる。


「猫の手も借りたい時なんでな」


カンベエの冗談ともとれる釘を刺す言葉に、
キクチヨは気の抜けるような変な声を上げ、案の定うなだれる。
土間に戻ろうときびすを返したカンベエとユメカは視線が合い、挨拶を交わした。
そしてユメカは昨日謝罪を言いそびれていたことを思い出す。


「あの…っ昨日はすいません。お昼まで起きなくって…!
でも今日は私もサムライ探しに参加しますね!」
「言わずとも、今日お主には来てもらう」
「?」


何か自分に役目があるように取れる言葉に、ユメカは無意識に首をかしげる。
その様子を見たカンベエが更に言葉を続けた。


「ユメカの目は姿を映し、語るからな」
「…………」


(私の目が姿を映して語る?)


言葉の真意が分からず、ユメカの眉が困ったように下がった。
目なんだから姿を映すのは当たり前じゃないのかと考えつつ、
その言葉を残して去っていくカンベエを訝しげに見つめた。

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