06
43 / 177
ユメカ、キララ、コマチの三人は、
マサムネの家に帰り着いた。
「おかえりぃ」
マサムネに声をかけられ、それぞれ返事を返す。
そしてキララがきょろきょろと辺りを見回した。
「あの……カンベエ様は…」
「ああカンベエさんは外だぜ。そっちの扉から出てくれや」
マサムネに言われた通り、
キララが張り出し縁の方に向かった。
キララの姿が見えなくなると、
コマチはユメカの服の裾を引っ張った。
「ん?何?コマチちゃん」
「オラがお風呂あがって着替えてる時に、何かあったですか?
姉さまはずっと複雑な顔してて、ユメカ姉さまは何だかうきうきしてるです」
どきりとする質問にユメカは目が丸くなった。
「あ……ははは」
(そっか、さっきコマチちゃんは傍にいなかったよね)
自分の感情はどうやら顔に出ているらしく、ユメカは気まずくなって苦笑いをした。
だがコマチの大きい瞳にじっと見つめられ、
素直に説明しようと決意した。
「じゃあコマチちゃん、ここにいるおサムライ様達には秘密ね」
(今カッツンに知られたら怖いことになりそうだし……)
こそりと耳打ちすれば、コマチの嬉しそうな返事が返ってくる。
誰にも聞かれないよう、寝床にしている部屋にユメカとコマチは入った。
キクチヨがいたが、大いびきを掻きながら熟睡していたため気にしないことにする。
敷かれたふとんの上に腰を落ち着け、ユメカはさっそく話し始めた。
「実はね、コマチちゃんがいない時に外に出て、
たまたま昼間の赤いおサムライ様に逢ったんだ」
「え―「しーー!」
コマチが驚いて声を上げそうになり、慌ててユメカはその口を手で覆った。
「ごめんです」
「うん。それでね、私……
前にもそのおサムライ……キュウゾウに逢ってるんだ」
またまた驚きの表情を浮かべるコマチに、
先程のハンカチを取り出して見せる。
「その時は怪我してたから、この布で応急処置したんだけど、
それからずっと逢うことなくて……
忘れられてると思ったんだけど、
今さっき逢った時にこれを返してくれたんだ
覚えててくれたことが凄く嬉しくて、
思わず態度に出ちゃったみたいだね」
「そうだったですか。
そんで、姉さまは複雑ーって顔ですか」
「う……そうなんだろうね」
キララに詳しく説明はしていないが、
敵じゃないということはどうしても言いたくなって口にしてしまった為
確かに困惑させてしまっただろう。
「姉さまは頭固いから、仕方ないです!
気にすること無いですよ」
コマチは小さい手でユメカの頭を撫でた。
「ユメカ姉さまの好いてる人分かったです!
そのまっかっかなおサムライです!」
「……っ!?」
コマチに指摘され、いっきに顔に熱が集中した。
「にっしっし!当たりです!」
「ううう……」
今更違うとは言えず、ユメカはうな垂れる。
「だぁいじょうぶです!オラ味方ですよ」
「……ありがとう」
コマチにはかなわないなと思い、ユメカはふにゃりと笑ってお礼を言う。
「じゃあオラそろそろお手紙書くです!」
コマチは立ち上がり、近くの机に向かう。
「お手紙?」
「オカラちゃんって友達に出してるです」
「あっ……そうなんだ」
手紙を覗くのはどうかと思い、ユメカはもう寝ることにする。
今日もたくさん色んなことがあったため、すぐに眠気が襲ってきた。
「じゃあコマチちゃん、私は寝るね」
「うん!おやすみなさいです!」
「おやすみ〜」
自分の布団に入り、瞼を閉じる。
『何故……変わらぬ』
キュウゾウの姿が思い出される。
でもすぐに意識は遠くなり、
いつしかユメカは安定した寝息を立てていた。