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「はぁ……」
七人全てが揃っている様子を思い浮かべ落ち着きを取り戻し、鼻をすすって空を見上げた。
ひんやりとした風が、少し熱を持ち赤くなった目を冷やしてくれる。
(あ……雨が降りそう)
見上げた空は一面灰色で、今にも雨が降ってきそうだった。
しかし何故か吸い込まれるような魅力を感じ、見上げたまま歩く。
すると案の定何かに躓き、態勢を立て直すことが出来ずにこけてしまった。
「いったぁ……」
打ちつけた膝がひりひりと痛むが、そんなことよりも高校三年にもなってこけてしまったことが恥ずかしかった。
きっと通りすがりの人が視線を向けているだろう。
そう覚悟しながらいそいそと、顔から火を噴く思いで下を向いたまま立ち上がる。
様子を伺うため、ちらりと周りを見た。
「……は?」
視界に入った光景に思わず素っ頓狂な声を上げた。
先程歩いていた通学路は何処へ行ったのか、機械の破片のようなものが辺りを埋め尽くし、荒れ放題の見たことの無い景色が広がる。
「ここ……どこ」
驚いて来た道を振り返るが、三百六十度同じ景色だった。
見慣れた景色は何処へいってしまったのか。自分は何処に来てしまったのか。
自身にとんでもないことが降りかかっているのだけは理解し、さーっと血の気が引く。
その時、ぱたりと顔に何かが落ちてきて小さく肩が跳ねた。
何が落ちてきたのか確かめるために手でそこに触れてみれば、濡れる感触から直ぐに雨が降ってきたのだと理解した。
濡れた手を見れば、黒く汚れていたため夢香は戸惑った。
灰でも含んで汚れているのだろうか、黒い雨は次から次へと降って来て制服を汚していく。
とりあえず雨宿りできる場所を……と、考えたがそんな場所は見当たらない。
誰かに助けを求めるにも、人の気配も感じられなかった。
急に怖くなって、ぞくりと嫌な感覚が身体を襲った。
「どうしよう……」
ひとりぼっちの不安から、必死に声を絞り出す。
しかしその声は自分が思っていたよりも弱々しくて、余計に不安が掻き立てられた。
雨も次第に強くなり、じわりと涙が浮かぶ。
夢香はその涙を手で強引に拭った。
「とにかく、此処がどこなのか理解しないと」
周りを探ってみなければ、帰ることも出来ない。
恐怖から震える脚を叱咤し、恐る恐る歩き出した。