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「あ!それね、働いた装飾店で貰ったんだよ。
紅い宝石が綺麗でしょ」
気付いてくれたことに嬉しくなってそう言うと、
コマチは元気よく頷いた。
「ユメカさん、
その宝石……力のようなものを感じます」
「えっ、そうなの?」
驚いてキララを見る。
「はい、例えると…………
何かを引き寄せているような強い力。
でもその力は、とても優しい感じです」
「何かを引き寄せて……あ…!」
はっとして制服のポケットに手を入れ、取り出して見せる。
「同じ指輪ですか?」
「うん。これね、ペアリングなんだ」
ふとキュウゾウの姿が思い浮かび、
ユメカの顔がほんのり火照る。
「……そうですか、どうりで。
この宝石同士が引き寄せ合っているみたいですね」
「ほんと!?凄いなー!
おばあさんが言ってた通りだ。
これって運命の赤い糸と同じいわれがある指輪なんだって」
これを想い合っているふたりがつけることが出来たら、
どんなに幸せなことだろう。
そう思い、ユメカはふたつの指輪を見つめる。
「ふふ。ユメカさん、好きな方がいらっしゃるんですね」
「……な!?
私そんなこと一言も言ってないよ!」
装飾店のおばあさんと同じようなことを言われユメカは動揺した。
焦れば焦るほど顔に熱が集中してしまう。
「だってユメカさん、指輪を見つめる表情が
誰かを想ってるみたいです。
分かりやすいですね、ユメカさん」
くすくすとキララが笑いながら答える。
なんだか自分よりもキララの方が落ち着いていて、ユメカは恥ずかしくなった。
「ユメカ姉さま、好いてる人がいるですか?
オラ知りたいです!」
途端にコマチが食いついてきたため更に焦る。
「違うから!そんなはっきり好きな人じゃ…!
っていうか分かんない!分かんないの!」
顔の熱で思考が思うように働かず、
自分でも何を言っているのか分からなくなったユメカは感情のままに口走った。