samurai7 | ナノ
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「お帰りなさいませ!キュウゾウ殿」


カムロ衆が、帰ってきたキュウゾウに声をかける。
しかしキュウゾウは一瞥もせず、アヤマロ御殿の門を潜り自室へと戻って行った。


必要な物以外置かれていない、殺風景な部屋。
それがキュウゾウの部屋だった。
しかしそんな部屋に、少々そぐわないものがひとつ。
机の引き出しを開け、それを手にとった。


「キュウゾウ」


名を呼ばれ、目線をそちらに向ける。
声をかけてきたのは、同じ用心棒のヒョーゴだった。
了承無く部屋の扉を開け、立っている。


「どうだったのだ、農民に雇われた大将は」
「……サムライ、だ」


その言葉を聞き、ヒョーゴはニヤリと笑んだ。


「ふ……そうか」


ヒョーゴは、キュウゾウの首にある傷に気が付いた。
更に楽しそうに笑みをつくる。


「その首の傷……さぞ疼くであろう。
キュウゾウ殿をもってして、討ち損じたとあらば、
相手にとって不足はない」


ボウガン男、それにキュウゾウ。
これでヒョーゴは確信した。


「…………」
「……ん?何を持っているのだ」


キュウゾウの目線の先、手に持つものにヒョーゴが興味を示す。
そして見覚えのあるそれに目を見開いた。


「それは……十年前、怪我をしていた腕に巻いていたものか」


キュウゾウが手にしていたものは、花が描かれた可愛らしい布。
戦が終わりヒョーゴと再会した時のキュウゾウの腕に巻かれてあったソレは、
当時柄が分からない程血が付着していた。
しかし今は、一度血に染まったとは思えない程に綺麗だ。
ナリに似合わず、キュウゾウが丁寧に洗っていたためヒョーゴは記憶に残していた。


キュウゾウは何も答えない。
しかしそれはいつものことで、ヒョーゴは肯定と受け取る。
十年前とはいえ、記憶は鮮明だ。


「確か戦場に居たという女のものだったか。
その女見つけでもしたか」
「…………」


「まぁいい。
俺はその女に興味は無い」


ヒョーゴはその言葉を残し、笑みを交えながら部屋を出て行った。
残されたキュウゾウは、
手に持った布を静かに胸元に収めた――。


→第六話へ
07.09.17 tokika/加筆修正:09.02.06

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