samurai7 | ナノ
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素早く立ち上がって、逃げなければ。
そう思ってユメカは脚に力を入れようとしたが、
態勢を変えようとしているのに気付いたボウガンは素早くユメカの手首を掴んだ。


「おっと、逃げるなんて駄目ですよ。
さっきぶつかったお詫びをしてもらわないと」
「そんな…!」


先程ぶつかったのは実際自分に非があるため、ユメカはますます焦る。
ボウガンはユメカの手首を掴んだままぐい、と引いた。
つられてユメカは怯えながら立ち上がる。


「任務の間、その女どうする気で?」


センサーが傘の部分に備え付けられたレンズに、ユメカを映しながら聞く。


「そうだねぇ、俺が捕まえておくさ」
「……邪魔になるだろう」
「まぁ確かに。だがこのままだと逃げちまうだろうし、
ああ……縛ってどこかに置いておくか」
「えぇ!?」


ボウガンがさらりと言った言葉に、ユメカは驚きの声を上げる。
その様子にボウガンはニィと笑みを見せた。


「なに、俺達の用事が済めば迎えに来てやるよ」
「ーー!」


(それじゃ遅いんだって…!)


ツッコミたい衝動にかられるが我慢する。
ふたりが「なぜ」と聞いてきて、ややこしくなるのがオチだ。


それよりも先程から任務と口にしていることがユメカは気になり、記憶を辿る。
そしてこのふたりが宿に襲撃を仕掛け
カンベエやゴロベエと交戦したことを思い出した。


「あ!ま、待って…!
おとなしくしてるから、一緒に連れて行って下さい!」


後で迎えに来るとボウガンは言ってくれているが、
目の前のふたりはアニメ通りに話が進むと、命を落としてしまうことになる。
するとユメカは永久に縛られたままどこかに放置となり、更に危険なことになるだろう。


自分が皆のいる場所に行くことができる方法は、今はこれしかない、とユメカは必死にボウガンを見た。


「縛られるのは嫌ってかい。
仕方ないねぇ、大人しく捕まってるんならつれてってやりますよ」
「っありがとう…!」


意外なことにあっさりとボウガンは願いを聞き入れ、ユメカは少し驚く。
逆にセンサーは、呆れたように溜息を吐いた。


「貴方の勝手ですが……邪魔になっても私は知りませんよ。その女」
「ああ。知らなくて結構」


そのままボウガンは歩き出す。
それに続いてセンサーも歩き出した。


「…………」


ちらりと、ユメカは自分の手首を掴んでいるボウガンの顔を見上げた。


アニメで見ていた時はそこまで深く考えなかったが……
ウキョウの配下とはいえ、完璧な悪党ではないのかもしれない。


すると自然に、ユメカはこの人達の運命も変えたい気持ちになった。
しかしこのふたりはカンベエ達と刀を交える。
そこに助けられる瞬間はあるのだろうか。
それにこのふたりを助けたとして、
自分たちが危なくなってしまっては元も子もなくなってしまう。


そんな風に悩みながら足を進めていた結果、
答えは見付からないまま、あっという間に木賃宿が見下ろせる位置に辿り着いた。

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