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「お食事の用意が出来ました。どうぞ」
暫く経ち、キララがカツシロウとユメカの前に、
美しく炊き上がったご飯を置いた。
「わー、綺麗!」
気付けばユメカの口からは、自然とその言葉が出ていた。
目の前のそれは、一粒一粒が光を発していると思えるほどの美しさだったからだ。
立ち上る白い湯気は鼻をくすぐり、食欲もわいてくる。
ユメカが綺麗と言ったことで、農民達三人は顔を綻ばせた。
「ほんに嬉しいお言葉だぁ。
カンナ村の米は綺麗な上においしいんだで。
さ、二人とも食ってけろ」
カツシロウがいただきます、と礼儀正しくご飯に箸をつけた。
その様子を見てキララ達も自分達の夕餉に箸をつける。
するとすぐに、カツシロウが異変に気付いた。
「お前達、何故米を食わん。それは何だ?」
カツシロウはキララ達が食べているものを指す。
その問いにキララが口を開いた。
「ホタルメシといいます」
ホタルメシ……農民達の食べ物。
ユメカは画面を通して見ていたため知っていた。
菜っ葉と少しの飯粒が浮かんだ、美味しいとは言いがたい汁ものだ。
「お米はおサムライ様に取っとくです」
「気にしねぇで下さい」
コマチとリキチが口々にそう言う。
しかしカツシロウはためらいを見せて箸が止まった。
「だがな……」
「本当に気にしないで下さい。カツシロウ様は村に来て下さる、大切なおサムライ様。
私達の作ったお米を食べて、力をつけて頂きたいのですから」
キララは微笑む。それを見てカツシロウも村を救う意思を固め、再び箸を進めだした。
するとキララは、心配そうにユメカの方を見た。
「食欲……ありませんか?」
そう思うのもそのはず。
ユメカはまだ一口もお米を口にしていなかった。
「ううん。食欲が無いわけじゃないよ、大丈夫」
「ではどうぞ、食べて下さい」
キララはユメカにも微笑んだ。
だがその表情はチクリと、ユメカの胸に突き刺さる。
「……でも…さ、私サムライじゃないし……。
これって大切な、サムライにあげるためのお米でしょ?
私なんか恐れ多くて、とても食べられないよ」
「そんな!ユメカさんは私達のためにおサムライ様を探してくださるじゃありませんか。
だからせめてものお礼です。
私達はお米を食べさせること以外……他に何も出来ないのですから」
「でも……」
「お願いします。食べていただけないと私達が辛いです。
それに、ユメカさんにカンナ村のお米の美味しさを知ってもらいたいですし」
再びにこりとキララは笑み、その様子に安心したユメカは、
お米に誓って自分も精一杯のことをしようと考えた。
「じゃあ、いただきます」
自然とユメカもキララに笑顔を返す。
そしてひとすくいのご飯を口に運んだ。
「おいしい……!」
今まで食べたお米なんか比べ物にならないくらい、本当に美味しいものだった。
農民達の努力と、お米を育てるための美しい水、そして愛情が込められているお蔭だろう。
『うまい!実にカンナの米はうまい!
ほんのりと甘く、程よい粘りが食うものの心を捉える。あれぞ米の中の米!』
ふと、ヘイハチが満足げにアニメで言った言葉を思い出す。
そして本当にその通りだと思い、ほう…と表情が和らいだ。
(ヘイハチ―――彼にも早く逢いたいな)
そう思いながら、再び箸ですくったご飯を口に運んだ。