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「…………」
カツシロウが状況を把握しようと様子を見ていて気付いたこと。
それは、夢香がキララ達とこれまで一緒に行動していたわけではなく、
先程出会い、今仲間になったということだった。
リキチがキララを見て驚いている姿がカツシロウは気になったが、
それ以上に夢香へ意識が向いていた。
夢香の容姿は、本人は特別良いとは思っていないのだが美しい部類に入っていた。
笑顔を浮かべれば人の目を惹く理由としては充分で。
男所帯で育った武士の子であるカツシロウは、女性に免疫が無いためつい無意識に魅入っていた。
「カツシロウ様、今から私達が根拠地とした宿に案内します。付いてきてください」
突然キララに話しかけられ、カツシロウの反応は一瞬遅れるが、直ぐに気持ちを引き締め頷いた。
「うむ」
キララが歩き出す。
それに付いていくように皆も歩きだした。
(これから私……皆と一緒に行動していくんだ)
こんな夢みたいなことが現実で起こるとは。
夢香は未だにふわふわと地に足が着いていないように信じられないでいたが、
大好きなサムライに逢えるのかと思うと嬉しい気持ちで満たされた。
しかしこの世界は……自分が居た世界なんかと比べ物にならないくらい、大変なところだろう。
生と死が常に隣り合わせなのだ。
アニメで観た、SAMURAI7―――
その通りの物語を……辿っていくのだろうか。
(じゃあ、好きな人達の死は……?)
それを考えると、急に怖くなった。
(嫌だ……とても耐えられない…!)
自分が何かすることで、未来は変わるのだろうか。
元の世界に戻ることよりも、夢香はこの世界の未来を変えたいと願った。
望むのは、サムライ達の全員生還。
変えてしまうのはいけないことかもしれないが、少なくとも自分は此処に来てしまったのだ。
自由に動く権利はあるだろう。
決意を固めて前を見据える。
そしてふと、現実かどうかはっきりしない時に逢った、
キュウゾウそっくりの人のことを思い出した。
(もしかして……本当にキュウゾウだったのかも?)
今思えば面影が少し若かった気がする。そして出逢った場所の風景から考えたら、
大戦が終わって直ぐの世界だったのかもしれない。
熱を出してしまったキュウゾウは、あの後どうしたのだろうか。
しかし大戦時代ならばもう十年も前の出来事になってしまう。
心配することは無いだろう。第一夢かもしれない。
キュウゾウのことを考えるだけで、
夢香は胸が高鳴った。早く逢いたいと真に願う。
勿論他のサムライにもだ。
(私の力なんてたかが知れてるけど、精一杯協力していこう…!)
強く強く、誓った。
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06.04.22 トキカ/加筆修正09.01.25