samurai7 | ナノ
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鍛冶屋に着けば、マサムネが快く迎え入れてくれた。ご無沙汰しております、とカツシロウが挨拶を交わして間も無く、マサムネが口を開く。


「あんたら掲示板は見たかい?カンベエさんが勅使殺しや天主の刃傷沙汰で打ち首たぁ、いったいどういうことだい」
「先生は……都へひとりで向かい、捕まったのです。皆を救いにいかねばなりません」
「都に喧嘩を売ろうってのか」
「捨て置くことなどできん」


徐々に戦に浮かされ熱くなっていくカツシロウに、キララがついに「お待ち下さい」と声を掛けた。


「カンベエ様はみすみす、処刑されるようなお方ではありません」
「だが現に、女達を救うと言ってこの始末」
「それは……。ただ、無闇に事を起こしてお邪魔になっては……」
「何もするなと」
「はい」
「何もしないのは、武士として一生の恥だ」
「手を差し伸べれば、カンベエ様の恥になるのでは……」


カンベエはこちらが考えもつかない手法で攻める。都に捕まったのも戦略のうちなのでは、とキララは思うが、その説得にカツシロウは目を逸らす。そうかもしれないと考える頭はあったが、それでもカツシロウはそのカンベエを越えたいのだ。カンベエを越えるには、この機会をモノにするしか無い。


「さむれぇならよ、しくじったら潔く死ぬものだぜ。オレもカツの字も、奴には腹立ててんだ!あいつ助けて、あいつに男見せてやらねーとなあ!」


キクチヨの発言により有無を言わせぬ空気となり、キララは表情を曇らせたまま口を噤んだ。


「マサムネの旦那、悪いが急いでオレ達の刀頼むぜ!」


キクチヨが振り返り、マサムネに自分の刀を差し出す。カツシロウもそれに続いて刀を差し出した。
マサムネはキクチヨのガラクタと化した刀を見て目を丸くする。


「こいつぁ打ち直さないと駄目だな。カツの字のは、こりゃまた沢山人を斬りなすって」
「…………」
「ま、サムライだから当たり前か。よし引き受けた。だが直ぐできるもんじゃねえ。できるまでそこに置いてある刀使いなぁ」
「かたじけない。お借りする」


キクチヨもカツシロウも刃の状態を確かめて刀を受け取る。その時、体の芯に響くような機械音が聞こえてきた。上空から聞こえてくるように感じ、皆急いで張り出し縁へと出てみる。すると砂漠で見た都が威厳を放つように上空を飛んでいた。移動で起こる強い風が髪や衣服を掻き乱す。


「うわあ!でっかいです!」


コマチが大きな目を更に丸くさせながら、機械音に負けないよう大きな声を上げる。目前にした都は重厚な雰囲気をまとっていて、思わず息を呑む程。これを相手に戦をすると考えると、ユメカは思わず震え上がった。しかしカツシロウはそう感じなかったようで、都の向かった方向を確かめ「行くぞ」と声を掛け外へ向かっていく。皆もその後をついて行った。


都が停留していたのは、臨時で設置された高台があるところだった。すでにどの階層もひとだかりが出来ている。どこからでも見えるように用意されている舞台。此処でカンベエの打ち首を行うことになるため、首と手を固定するものが既に用意されていた。
それを目にしたキララが目を伏せ、ひやりと汗をかく。カンベエは匠に斬首を回避するのだが、それを知らないキララはとても辛いはずだ。その不安を取り除いてあげようと、ユメカは言葉を選びながら隣に目を向けた。しかし視界の端に見えた金髪に思わず息が止まる。
遠く人混みに紛れているが、間違いない。気付いた時は引力で引き寄せられるように必死に人混みを掻き分けていた。


「おい!どうしたんだ、急に!」


その様子に気付いたボウガンが後を追う。ユメカは振り返らず、小柄な女の身であるためすいすいと人混みを抜けて見えなくなっていく。一方ボウガンは人混みの中でも頭一つ分抜けるくらいの長身。思うように付いていけないことに苛立ちチッと舌打ちした。

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