samurai7 | ナノ
02
12 / 177

とにかくお礼を言わないとと思い、夢香は口を開いた。


「ありがとうキララちゃん」


しかしその瞬間、キララとリキチとコマチは驚いた表情へと変化した。
何故そんな顔で見られるのかと焦った夢香だったが、
聞いてもいない名前を言ってしまったからだと直ぐに気付いた。


「何故私の名前を……」


案の定キララがそう問い、夢香は思考をフル回転させて言い訳を言う。


「いや、さっき悪いけど立ち聞きしてて、ほら!それでキララって名前なんだなーってね!
あ!もしかして"ちゃん"付け嫌だった?あはは」
「いえ、嫌というわけでは……」
「よかった!じゃあキララちゃんで!」


とても苦しい誤魔化し方だったが、納得したように取れこの場は収まる。
キララが「では……」と、口を開く。


「貴女のお名前を聞かせてもらえますか?」
「あ、うん。椿 夢香です」
「ユメカ様……」
「様っ!?待って待って、私"様"なんて柄じゃないから…!」
「そう……ですか?ではユメカさんと」
「うん」


名前にさん付けされることは初めてで、
くすぐったさを覚えながらも夢香は頷いた。


「ではこちらも改めて自己紹介を。私はキララです。
そしてこの子は妹のコマチ。この方がリキチさんで、こちらの方が……」


キララの視線の先を見る。
すると初めて凛々しい表情のカツシロウと目が合った。


「私は岡本カツシロウだ」


美形と形容出来るほど整った顔つきのカツシロウ。
これまでカツシロウのことは、可愛さ故に密かに脳内でカッツンとあだ名を付けていたが、
実際に会ってみれば自分と身長差もあり、可愛いというよりはかっこいいと思えた。
実際に会ってみて感じる思わぬギャップに嬉しくなり、微笑み返す。


「ところでユメカさんは、なしてあんな道端にに倒れてたんだ?」


いきなり核心付く質問をしてくるリキチに夢香は内心焦る。


「あ、えっと。その……自分でも良く分からなくて。
違う場所に居たはずなのに、いつの間にか此処に居たっていう感じなんです。
……すみません!意味わかんないですよね…!」
「なっ、謝ることことねェだ。
記憶がハッキリしねえって事かァ……」


リキチが考え込む。
すると今度はキララが口を開いた。


「行くあてはありますか?」
「え……」


どうしよう。
当たり前だけど……無い―――。



どうにかして一緒に行動できるようにしないとと思い、慌てて考える。


「その……無くて。だからっ…
「では!私達と一緒に、おサムライ様を探して下さいませんか!?」


(…………)



「え!えッ!?」

「先ほどのお話を聞かれたのでしたら、もうお分かりでしょうが、
私達は野伏せりを倒して下さるオサムライ様を探しています。
帰る場所が無いのでしたら、貴女に……ユメカさんに手伝ってもらえたらと思うのですが、駄目でしょうか?」

(い、いやいやいや!駄目なわけ無いから…!)

「いいです!というか、そうさせて下さい…!」
「良かった……」


一連の流れを見て、コマチは満面の笑みを浮かべる。


「本当に良かったです!おら、ユメカ姉様のこと一目で気に入ってたですよ!
おサムライ探し一緒に頑張るです!」
「ありがとうコマチちゃん!嬉しい!これからよろしくね」
「はいです!」

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -