samurai7 | ナノ
20
133 / 177

翌日、ユメカは身を清め、腹に巻いていた包帯を換え外へ出た。
ぐっすりと眠ったお蔭で調子は良い。傷口は痛むが、大丈夫だ。包帯を換えるときに見たそこは、綺麗に縫われていた。


キュウゾウに謝らなければ。そう思い姿を探すが、見付からない。
村は復旧作業が進められていて、田んぼまで出れば黄金の稲を刈る農民達の姿があった。見回せばあぜ道にシチロージの姿を見つけたため、近寄る。


「シチさん」
「ユメカ、もう動いて大丈夫なんで?」
「うん、平気。キュウゾウは……?」


シチロージは少し言い辛そうに間を置き、刃先が仕舞われた槍の柄でこめかみをかいた。


「あー、キュウゾウは今いねぇ」
「え」


驚きのあまり固まる。一瞬で世界が反転した気がした。しかし、そうだ、と思い出す。
野伏せりの戦の後、カンベエは村の復旧のためにサムライ達を残し、ひとりで出て行った。リキチの嫁と、ホノカの妹を都から救うため。そして、キュウゾウはカンベエが居なくなった後、此処に用は無くなったとばかりに出て行ったではないか。


「そ……っか」


自分に何も言わずに出て行ったんだ、とショックを受ける。しかし文句は言えない。自分だってキュウゾウに何も言わず、勝手な行動を取ったのだから。
ユメカはふらりとシチロージに背を向け、再び歩き出した。


(これから……どうしよう)


村の復旧を手伝うか、それとも……。
リキチの家の付近までくると、ここの辺りは特に酷い被害は受けておらず、家もしっかり立っていた。


(そうだ、リキチさん大丈夫かな)


あばらを折ったのだ。自分以上に怪我をしている。心配になってリキチの家の戸口まで行くと、中からなにやら話し声が聞こえたため、足を止めた。


「それにしても、何故先生はお一人で旅立たれたのか。相手は都、攻め込むにしても一人ではあまりに無謀だ」
「カンベエ様が無謀なことをするはずがありません。お考えがあってのことだと思います」
「オラもそう思うなぁ、キュウゾウ様も、同じ思いでいなくなったのかもしんねぇ」


キュウゾウ、の名にぴくりと反応する。どうやら中にはカツシロウとキララとリキチがいるようだ。


「あの方は、先生との雌雄を決するために同等していました。先生の居なくなった此処には、もう用は無いのでは……」


カツシロウの言葉が、ずきりと胸に刺さった。そうだ、最初からキュウゾウはカンベエを理由に此処まで来ていたんじゃないか。


(本当に私、自惚れすぎ……)


このまま中に入る気になれず、ユメカは引き返そうとした。しかし、再び声が聞こえ、足を止めた。


「でも、ユメカさんがいらっしゃいます。あの方はまた、戻ってくると思います」
「オラもそう思うだぁ」


(…………)


「おいユメカ、なあにそんな所につったってんだぁ?」


いつの間にか近くまで来ていたキクチヨに大きな声で言われ、驚いたのもつかの間、家の中にいる三人も驚いてこちらを見た。


「ユメカさん!お体は大丈夫なんですか?」


キララが直ぐに駆け寄ってきて、ユメカは「ありがとう、大丈夫だよ」と返す。するとキクチヨはその横を通り抜け、包帯を巻いて布団に横たわるリキチの傍へどかりと座った。


「リキチ、俺は行くぜぇ、カンベエにばっか良い格好させてたまるか!」


言っている意味が分からず、リキチは一瞬ほうける。するとカツシロウがキクチヨを見た。


「サナエ殿の救出にか?しかし、先生が我々を此処へ残したのは、農民達のために……」


全て良い終わる前に、キクチヨはその胸倉を掴み上げた。


「おめえだって、冗談じゃねぇって思ってんだろ!?」


キクチヨの言葉に、はっとカツシロウは目を見開いた。「お主、サムライか」と、カンベエが問うて来たときの姿が蘇る。


「サムライ……だ」
「だったら良い子ちゃんぶるのやめろってんだ!何やるのが一番サムライらしいか、わかってるくせによォ!
カンベエの野郎はまだ俺達を半人前扱いしてやがるのよ。俺達の手で、リキチの女房助けて、あの髭面に一泡吹かせてやろうぜ。おめえだって、暴れたりてないんだろ!?」


まくしたてる言葉に、ついにカツシロウは頷いた。キララとリキチが不安げな瞳でふたりを見る。一方ユメカは目を細め、その姿を眺めた。
これから先は、村に残るヘイハチ達につくか。虹雅峡へ向かうキクチヨ達につくか、ふたつにひとつだ。どちらを取ったとしても、全員と合流する。しかし、じっと村で待っていることは無理に思えた。じっとしていたら、不安な心が押しつぶされそうになる。キュウゾウを追いかけたい。早く謝りたい。


「キクチヨ、私も行きたい」
「ああ?」
「ユメカさん…!?」


キクチヨは首を捻り、キララは驚いてユメカを見つめた。


「駄目?」
「いやー別に駄目じゃねぇけどよ。だっておめー未来知ってるわけだろ?」
「大まかだけどね」
「その未来を知ってるユメカが付いてくるってこたぁ、この選択は間違いじゃねぇ!俺様はやるぞ!よし、ユメカ付いて来い!」


ユメカは意思を固め、キクチヨに頷いた。

×
グランプリ賞金5万円!
BL小説コンテスト開催中!
- ナノ -