samurai7 | ナノ
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(あ、いた)


最後の握り飯を渡す相手を探していて、ユメカはようやく彼の姿を森の中で見つけた。木の根元に座り、目を伏せている。それは、そう遠くない過去の情景と重なった。キュウゾウと初めて出逢った時だ。その時の彼は機械の破片で出来た壁に寄りかかり、今のように座っていた。ふと懐かしくなりユメカはそろりそろりと足音を立てないように近付いていく。目の前まで来た時、すっと彼の目は開かれユメカを見た。


「あれ、刀向けられると思ったのに」
「……気配で分かる」


当時と違い、キュウゾウはユメカの存在を感じ取れるまでになっていた。共に時間を過ごしてきた故の賜物か。ユメカは驚き「そっか」とはにかんだ。


「食事だよ。力つけて、戦に望んで」
「かたじけない」


キュウゾウが手を伸ばした。しかし取ったのは握り飯ではなく、それを持つユメカの手首。


「冷えている」
「ああ、皆に渡して回ってたから。ちょっと寒くて」


するとそのまま腕を引かれ、座るキュウゾウの腕の中へと収まった。心地よい体温に包まれ、ユメカは安心しながら目を閉じた。想像できなかったキュウゾウの温もりが、今はあたりまえになりつつある。それが嬉しくてたまらない。ようやくキュウゾウが握り飯を取り、ユメカを後ろから抱いた格好のままで食べ始めた。


「キュウゾウ、全て終わったらカンベエと戦うつもりだよね?」
「そのための戦だ」


目的は変わっていないようだ。今皆と共に戦っているのはカンベエと決着をつけるため。戦を早く終わらせるために、協力しているに過ぎない。それなら皆が生きて帰れたとして、カンベエとキュウゾウは戦うことになるのか。きっとそこにどちらかの死は存在しないと信じているが、不安はある。
そう考えていれば、キュウゾウが背後でほんの少し笑ったような気がした。気のせいだろうか、耳元で感じた息を吐くような僅かなものだ。


「それで仕舞い、だ」
「仕舞い?」


聞き返した言葉を遮るように、冷たい雫が鼻の頭へと落ちた。次第に頬や額へ。ぱらぱらとその数を増やしていく。


「雨……」


ぽつりと呟いたユメカの背後で、キュウゾウは鋭い瞳を宿し立ち上がった。


「来た」


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09.10.25 tokika

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