samurai7 | ナノ
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躯を重ねた後、ふたりはすっかり乾いていた服を身に付け寄り添い眠った。
暫くして先に目覚めたのはユメカだった。
まだ日も昇らぬうちに目の前で眠るキュウゾウを確認し、ユメカが微笑み身を摺り寄せる。


好きな人と結ばれた喜びは想像以上に大きかった。心から満たされる思いは心地良すぎて、何もかも忘れてしまう。言い意味でも、悪い意味でも。
しかし同時に、深く愛してしまった者を失う悲しみは大きな苦しみとなるだろう。ここまで求めてしまった。恐れるのは確実にやってくる未来。


ユメカは情事の時に見た、キュウゾウの胸元にあった大きな古傷が気になり、そっとその箇所を撫でた。
すると、キュウゾウがうっすらと目を開ける。


「あっ、ごめん……起こしちゃった」
「いや……起きていた」


キュウゾウの答えに苦笑する。それでは身を摺り寄せる様子を黙って見ていたというのか。随分と意地悪だ。
しかしユメカは問いただすことはせず、更に身を寄せキュウゾウの胸元に耳を当てた。


――とくん、とくん


優しい心音が酷く安心を誘う。


「キュウゾウ」

「……なんだ」

「絶対、生きてね」

「…………」


返事が返ってこないことに恐怖が襲い、ユメカは顔を上げた。
目が合うと、キュウゾウは小さく確かに呟いた。


「ユメカを置いては死なぬ」


しっかりとした腕で身を引き寄せられ、ユメカもキュウゾウの背に腕を回し抱き締め返した。
ユメカが言った言葉が意味すること。それは確実にユメカが見た未来には、キュウゾウが欠けるということだ。


キュウゾウはユメカの存在を感じるように抱く。
ふとした瞬間、消えてしまうんじゃないかと思えるほどの華奢な身。
しかし、力を込めすぎても折れてしまいそうだ。


ユメカを悲しませるわけにはいかない。
そして何より――手放したくなどなかった。




キュウゾウは生きる事に執着した己に問いかける。




――生きるとは、何だ。


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09.08.20 tokika

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