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「じゃあ!私が皆を守るから!!導きの巫女として。それに、カンナ村の仲間として!」
皆それぞれ少しの困惑を残しながらも、澄みきったユメカの言葉に頷いた。
ユメカも心底安心したように涙を浮かべる。秘密事を抱えていることは、気付かないうちに相当な重りになっていたようだ。
今ならばSAMURAI7の皆の中に自分がいてもいいように思え、ユメカは笑顔を浮かべた。
緊迫した空気が無くなったところを見計らい、キララはコマチの名を呼んだ。するとコマチが「おお!忘れてたです!」と背に丸めて背負っていたものを外す。
キクチヨに近付き「ちょっとちょっと」と声を掛ければ、キクチヨは何用か聞こうと小さいコマチに合わせて大きな体を屈めた。するとよいしょとその体をよじ登る。
驚くキクチヨを尻目に、肩に乗っかったコマチが満面の笑みを浮かべた。
「ごらんあれ〜!です!」
丸まった布を広げ、垂らしてみせた。
縦長のそれには、丸が六つ三対に並び、その下に三角が一つ。最下部に“た”の文字が書かれていた。
カンベエが関心したように微笑んだ。
「ほう、旗か」
「戦だと、カンベエ様はおっしゃいました。戦なら軍旗は必要でしょう?」
キララが言うには、丸がサムライ、大きい三角が農民とサムライのどちらでもなくて、どちらでもあるキクチヨ。“た”は、田んぼの“た”で農民を指す。
「ユメカさん、勿論、ユメカさんは私達と同じ“た”ですよ」
「同じ……?」
「ええ、カンナ村の一員ですから。ユメカさんばかりが未来を背負って辛い思いをすることは無いんです。“た”には村の皆全員がいます。それに私達の前にはおサムライ様がいるじゃありませんか。
どうか、ひとりで抱え込まないでくださいね」
(キララちゃん……)
自分が色々と考えている間に、キララも同じように考えてくれていたのだろう。
旗に新しく文字を加えることなく、一緒にしたキララ。
疎外感を感じていたユメカには、とても嬉しいことだった。
「ありがとう…!!」
ユメカはぎゅうとキララに抱き付き、驚いたキララが目を見開いた。
肩を震わせているユメカの背を、ゆっくりと撫でる。
「いや、良い光景だ」
「ゴロさん、ゴロさんが言ったら別の意味に聞こえてしまいますですよ」
「ほー。シチさん、それは聞き捨てならないなぁ、どういう意味ですかな?」
「おっと。お気になさらず」
涙が生まれ、笑い声が溢れ。
それぞれが背負った使命は重いが、皆で協力していくという確かな安心が此処にはあった。