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人の往来が激しい場所から少しそれた所にさしかかると、突然コマチが声を上げた。
「あ!人が倒れてるです!」
指差す方向にはうつ伏せに倒れている人。
人通りが少なそうな場所だったため、自分達が初めて見つけたのだろう。
驚いて三人は近寄ってみる。
「大丈夫ですか?」
キララが心配そうに声をかけた。
倒れている人の顔は見えず、変わった格好もしているが、
華奢な体つきから女であることは分かる。
キララの声かけで反応が無いため、リキチは生きているか確かめようと、
急いでうつ伏せになっている体を腕で支えるように仰向けにさせた。
そこで初めて女性の顔が目に入り、
三人とも予想外の美しさに目をしばたかせた。
正直者のコマチは直ぐに声を上げる。
「うお!すっごい美人です!」
「ほんにー。じゃねぇ!息!息してるだか!?」
見入っていたキララだったがリキチの問いにハッとし、
彼女の口元に手を近づけてみた。
「大丈夫。息はしています。
見たところ外傷はありませんし、気を失っているだけのようですね」
その言葉にリキチとコマチはホッとする。
だがすぐにリキチは困ったように眉根を寄せた。
「だども、この人どうするだか?」
コマチは当たり前と言わんばかりに胸を張った。
「助けるです。今日から泊まる宿につれて帰って介抱してあげるですよ!ね、姉様」
だがキララは厳しい表情で首を横に振った。
「いいえコマチ。私達はとても人を介抱する余裕はありません。
こうしている間にも……」
すると突然目の前の女を示すように、キララの振り子の水晶が強く光りだした。
「……!?」
「姉様!水晶が反応してるですよ!
もしかしてこの人おサムライですか!?」
「なッ!女のおさむれぇ様か!?」
キララは瞳を閉じ、振り子に集中する。
「……いいえ。おサムライ様ではありません」
(でも……)
決意を固めたように瞳を開いた。
「私達の手でこのお方を介抱しましょう」
(もしかしたら……)
水晶は今、自分達の求めているサムライに反応するはずだが、
何故か違うものに反応をしているように感じた。
キララはこの反応を放っておけなかった。
サムライでは……無い。
―――しかし、とても重要な方。
キララはそう感じてしかたがなかった。