samurai7 | ナノ
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交易の盛んな町、虹雅峡――。


様々な人が往来する場ながら、ひときわ目立つ一行がいた。
水分り(みくまり)の巫女キララ、その妹コマチ、青年であるリキチの三人だ。
身に着けている服装から百姓ということが一目で分かる。

三人の表情はこころなしか暗かった。
リキチが背負っている米俵は一度破れたようで、縄で引き絞められている。
リキチはキララをちらりと窺い、口を開いた。


「水分り様、さっきのおさむれぇ様に、やっぱお願いするべきだったんでねえだか……」
「いいえ。先程の方からは戦場(いくさば)の匂いがしませんでした。他の方を探すべきです」


先程のサムライ……その名をカツシロウ。
灰緑の髪をひとつに結い上げた若いサムライだ。
そのサムライには先刻、見ず知らずの輩に米を奪われた所を助けてもらった。


キララの言葉にリキチはそれきり黙り込む。
水分りの巫女である少女の言葉は、とても説得力があった。
キララの操る振り子には、とても不思議な力があるからだ。
近くで見てきたリキチはそれをよく理解できる。


「姉様、ここら辺におサムライは他にいないですか?」


今度はコマチが口を開く。
その問いで更にキララは振り子に集中してみるが、
水晶の反応は見られず残念そうに答えを返した。


「ええ……」


三人には重大な使命があった。
使命とは、自分達が住むカンナ村を守ってくれるサムライを探し、雇うこと――。
報酬はリキチが背負っているお米だ。


今の時代、米を食べられる者は数少ない。
百姓であるキララ達でも、育てたお米は野伏せりに奪われてしまうため口にすることは滅多に無かった。
それだけでも辛いというのに、
野伏せりは見目の良い若い女、そして子供までさらって行ってしまう。


そのため我慢できなくなったカンナ村の人々は、野伏せりに対抗できるのはサムライだけだと考え、
サムライに野伏せりを斬って貰うことにしたのだ。


もしこのことが野伏せりにバレれば、反逆の罪で村は壊滅させられるだろう。


そんな村の命がかかった重い使命、サムライ集めは、
稲穂が頭を垂れるまでにやらなければいけなかった。

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