samurai7 | ナノ
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カンナ村へと入るのはある意味苦痛なものだった。
ユメカがくんくんと服の臭いを嗅ぎ、顔をしかめる。


(ううう……)


村の入り口は、先回りされた野伏せりによって監視されていた。
そのため怪しまれずに村へ入る手段として肥桶を運ぶ荷車に乗ってきたのだ。
悲しいかな若干臭いが染み付いているようで。
気にしたユメカはキュウゾウから自然と距離をとっていた。


目の前にあるのは夕日に照らされ、人影も無い静まり返った村。
その予想もしていなかった様子に慌てた農民達は、サムライが来てくれたことを伝えながら家々の戸を叩く。
しかし誰一人として出てはこない。
固く閉ざされた扉の向こうで、村人は息を潜めているようだった。


「……っ。爺様を呼んできます!」


キララが駆け出す。その後を追い、コマチも走り出した。
サムライ達は事の成り行きを待つしかなく、カンナ村を思い思いに眺めた。
木造作りの家々、時代に取り残された村。
此処が自分達の城となる。
富と名誉を得るためにサムライとして戦った大戦時には、誰もこのような未来が訪れることを想像できなかっただろう。


キクチヨがこの場から離れていくのをユメカは視界に捕らえた。キララとコマチが向かった方向だ。
そちらに行けばコマチの親友であるオカラに会えることを思い出し、
ユメカもそっとそちらに足を向けた。


案の定田んぼのあぜ道で、コマチとオカラとキクチヨが話している姿があった。
広く視界が開けているため、三人もすぐにユメカに気付く。


「あー、こいつがユメカって奴か」


赤ちゃんの人形を背負ったオカラの開口一番にユメカが驚く。


「え、何で分かるの?」
「そりゃあ、コマチの便りでさ。ししし…」


納得したユメカ。
自分のことも知らせていてくれたのかと嬉しくなるが、
何気に意味深な視線を投げて笑うオカラに途惑った笑みを返す。
キクチヨが小さいふたりを見下ろした。


「おい、ちょっくら墓場に案内しな」


オカラが眉根を寄せる。


「……んなとこ行ってどうすんだ」
「隠し蔵、おおよそその辺りだろう」
「ふん」


野伏せりを倒してもらうためにサムライを呼んでおきながら、
サムライが来ることを恐れた農民は、女子供を隠し蔵に隠していた。
キクチヨはそれを先程コマチとオカラの会話で聞き、自分の勘を働かせたようだった。
勘というよりは、確信に近い。


「ユメカは奴らのところに戻ってろよな、
俺様が後で活躍する姿を見せるでござる」


自信満々に噴気孔からブシュッと煙を吐き出し、ふたりを連れて行ってしまう。
ユメカはその後姿を見送り、確かにキクチヨが活躍することを思いだし口元を緩めた。
再び皆のもとへと戻る。その頃には日が沈み、辺りに闇が広がっていた。
静かに佇むサムライ。カツシロウは落ち着かない様子だった。
その時、丁度キララが戻ってきた。


「みんな爺様の所に。
すみません、気を悪くしないで下さい」

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