samurai7 | ナノ
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息を荒げユメカが皆のもとに辿り着く。
その時には、もう戦いは終わりを迎えていた。


「うそ……」


岩場に身を預け、大量の血を流すヒョーゴの姿。
キュウゾウがその姿を見下ろし、刀に付いた仲間の血を払い鞘へと納めた。


「ヒョーゴ!!」


ユメカは苦しく息をする男のもとに駆け寄る。


「ヒョーゴ…!!」

「煩…い。聞こえ……て、いる」

「……っ」


蒼白になっていくヒョーゴの顔。
ユメカの瞳から涙が溢れた。


(やっぱり私、何もできなかった…!)


「ふ……かかったな、サムライ共め…!」


ヒョーゴが目の前に集まった敵の姿を映し、
笑みで表情を歪めながら言葉を紡いだ。


「このままでは…済まさぬ。
ソウベエ殿は今頃…っ本殿に向かっておるわ……」
「……!」


サムライ達の動揺に反応する力はもう無く、
息も絶え絶えになりながら、ヒョーゴの視線はキュウゾウへと向けられた。


「何故だ…キュウゾウ……!」

「……生きて、みたくなった」

「馬鹿め…!」


キュウゾウらしい言葉。
目の前の友の姿は、あまりにサムライだった。
自分は時代に流され地に落ちたが、キュウゾウはこれまでずっと空を眺めていた。
キュウゾウの生き方ではこれから先は駄目だと否定していたはずだが、実際は羨ましかったのだろう。
斬られたことを、どこか満足している自分に気付き
ヒョーゴは口の端に笑みを含ませた。


「お…い、何故お前は…泣く」

「え……」


ぼろぼろと視界の端で涙を流す女の姿。
そこまで互いを知る関係で無いというのに、何故泣けるのか。
ヒョーゴは最後までこの女……ユメカへの疑問が尽きなかった。


「俺には……泣いてくれる者なんぞ、居ないと……思っていたんだが…」


父も母ももう居ない。
自分が居なくなることで、誰が悲しむというのか。
しかし目の前に――いた。


「ユメカ……礼を、言う」

「ーーっじゃあ……死なないで!」

「……ふっ、…キュウゾウを…頼む…っ!」


そのまま目を閉じ、ヒョーゴは息を引き取った。


「ーーーっ!」


ユメカは声を殺して泣く。しかしそれすらも堪えようと、何度も涙を拭う。
キュウゾウはユメカの姿を、表情を変えずにじっと見つめた。


「お出で願えるか」


カンベエに問われ、キュウゾウは口を開く。


「出立は……」

「今すぐ」


理由はどうあれ、心強い戦力となるキュウゾウがついに仲間になり、皆も喜びの表情を浮かべる。
しかし既にみんなのもとへと降りて一連の様子を眺めていたキララが、眉根を寄せた。


「私は……反対です」


カンベエに意思を告げたキララ。
しかし、本来言うはずの言葉と少し違っていた。
そのことに気付いたのは、
未来を知るユメカのみだった。


→第十四話へ
09.03.04 tokika

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