miss you D2前編 | ナノ
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fortune.26 Treasure hunting of a dream


「ふぅ…」
「どうした? めずらしく静かじゃないか。 拾い食いでもして当たったのか?」
「ふん、ほっとけ。俺だってなぁ、いろいろあるんだよ」
「ほぉ、おまえも、悩むような頭を持っていたんだな……そんな風には見えないが」
「ダメよ、ジューダス。ロニったらナンパに失敗したらしくて、落ちこんでるの。やさしくしてあげて?」
「何かと思えば、そんなことか…くだらん な」
「ロニにとっては、 死活問題なんだよ。生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ!!」
「おまえら、ウルサイぞ−!見てろよ〜〜、ノイシュタットで敗者復活戦だぁッ!待ってろよっ、ノイシュタットぉ!」

ロニのかけ声とともに白雲の尾根を進むことどれだけの時間が流れただろうか。
カイルとリアラ、そしてロニ、そのしんがりを海とジューダスが進みながらはぐれないようにとゆっくり歩く。

「ねぇ、ロニ。ノイシュタットって、どんなところか知ってる?」
「ん〜と、どうだったかなぁ…」
「産業が発展している豊かな街だ。もっと も、貧富の差が激しくて、住民の心の中は豊かとは言えない状態だったがな」
「おう、それそれ!なんかそんな感じの街だよ」
「適当に相づち をうつんじゃない。今のは昔の話だ。先の騒乱の後に改革が施行されて、今では豊かで住みやすい街になっている」
「へ〜、ジューダ ス、ずいぶん詳しいじゃんか」
「昔、ノイシュ タットに知り合いがいた…それだけだ」

知り合い、それはきっと、イレーヌ・レンブラントのことだろう。

オベロン社フィッツガルド支社の総責任者で、海も過去に天地戦争の再来と言う歴史の本でイレーヌのことは頭に入っていた。自分と変わらない歳で、ヒューゴとともにこの世界を裏切ったとしか書かれていなかったが、写真から見るにしてもとてもそうには見えなかった。自分と変わらないのに自分より大人で色気もあり、朝焼け色のロングヘアをした知性に満ちあふれた美しいお嬢様風の出で立ちだったから。

ノイシュタットの民に慕われていた彼女がなぜスタン達と戦い、ヒューゴに荷担してしまったのだろう。
ジューダスはイレーヌのことをきっと知っているのだろう。父親の会社の部下なら特に。しかし、今は聞くに聞けないのは分かっている、いつか話してくれるだろうか、その横顔は何も語らないけれど。

森や山を抜けて、田舎のリーネとは変わった町並みが見えてきた。深い霧が晴れた先のノイシュタットは例えるならまるで煉瓦の町並みが立ち並ぶヨーロッパの様な綺麗な街だった。奥には闘技場があり、昔は桜の木が咲き誇る美しい街だったらしいが、桜の木は先の戦乱ですべて散ってしまったそうだった。

「うわぁ…!すごい綺麗な街だねー!」

ダリルシェイドとは違うとても戦乱があったとは思えない美しい町並みに思わず感嘆の声を上げた海。
まるで観光に来たみたいだとひとりであちこちを見渡していた。

「おい、海、観光に来たんじゃないんだ。船に乗るために来たんだからな」
「はーい」

お互いの間にあった見えない壁を壊した昨夜。2人はいつもの口調で話せるようになり、そんな姿にリアラは安心したように笑顔を浮かべてカイルの手を引いた。

「やっとノイシュタットに着いた〜! ここから船に乗れば、すぐハイデルベルグだね!」
「船が着くの は、スノーフリアの港だ。ハイデルベルグは、そこからさらに徒歩で北上しなければいけない」
「ってことは、英雄王 ウッドロウに会えるのは、まだ先になるってわけか…」
「だいじょうぶ!きっとすぐだよ、すぐ!さ、行こう!」
「ええ、行きましょ、カイル!」

そしてジューダスと歩き出した海、ひとりになり、置いてけぼりのロニに海の腰に帯びたクライスが馬鹿にしたように笑っていた。

『ドンマイだロニ。
お前がモテる日は絶対に来ない。』
「クライス!失礼なこと言わないの!モテるからってロニと比べるなんてよくないわ!」
『いや、お前もかなりひどい言い方してるからな』
「全く、口の減らない奴だ」

ジューダスはこの世界の時代情勢にとても詳しい。きっと、この世界で何も分からなくて怪しまれないように必死にこの沈黙の18年間を必死に補ったのだろう。
海もこの世界や時代のことを調べはしたが覚えてなければ意味など無い、彼は本当に頭がいいんだろう。

そんなやりとりをしながら港にたどり着いたが、港には人だかりが出来ている。

「何だありゃあ?」

事情を聞くと、どうやら船の修理がまだ終わらないそうだ。
慌ただしく動き回る船員達。他の乗船客も待たされているようでそのいらだちがこちらにまで伝わってくるようだ。
思ったよりもデビルズリーフの主が船に与えた損害は大きかったらしい。

「おい、どうするよカイル?この調子じゃいつになったら船がでるか分かったもんじゃないぜ」
「困ったねぇ、…一晩たっても船が直ってないなんて…」
「だが、ハイデルベルグへは海路で行くしか他に方法はない。ひたすら待つしかないだろう」
「う〜ん…でもなぁ〜ただ待ってるってだけでも暇だよね、なんか時間潰しできないかなぁ」
「すいません、ちょっとよろしいですか」

思ったよりも掛かる修理に時間を持て余して悩むカイルたちになにやら身なりの整っているが、胡散臭い笑顔を張り付けたような怪しげな商人が声を掛けてきた。



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