それでも、僕は | ナノ


▽ キライだった



「それでも、ぼくは、エースの弟なんだ」

 赤犬に狙われたルフィを前に体は本能的に庇うように動いてしまう。
なんだかんだと放っておけない弟を庇って覚悟した灼熱のマグマは俺を貫くことはなく、過去に縁を切ったはずの弟を貫いていた。
 弟が小さく口にした言葉は俺の心に深く突き刺さる。ジンベエに抱えられ肩越しに見えた弟

反射的に手を伸ばすがルフィじゃない俺の手が伸びることはなく、どんどん遠ざかっていく

 視界が霞んで見えなくなる。



歪む視界が捉えられた光景を最後に、俺の視界は真っ暗になった。



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「俺は泣き虫が嫌いだって言ってるだろッ!」

「だ、だっでぇ〜!!」

 頭にあるたんこぶを抑え泣くルフィにもう一発殴ってやろうかとパイプを握りしめたらサボがルフィを庇い俺を宥めた。
サボはルフィに甘ェと文句を言いながらパイプを放り投げ、その辺にある石に腰掛け道中で採ってきた果実を口にする

 泣き虫を見るとイライラする。俺を見捨てたアイツを思い出すからだ



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「アラン!町に下りて買い物して来な!」

「う、うん。いつものところ、でいいんしょ?」

「そうだよ。分かったらさっさと行きな!」

 エースの双子の弟、アランはダダンにカバンとメモを渡され家から追い出されるように町へ向かう。
素直に町へ行くアランを睨むようにジッと見続けるエースに溜息をつく。双子でなんでこうも違うのか

 金色の髪を靡かせるアランはぱっと見て男だとは分かりづらい、普通の子供であった。
性格は少々内気な部分があるが、彼を見てすぐに海賊王の息子だと結び付けられるような人間は早々いない
 対してそこでむすっと座っているエースは反抗的だし暴力的だ。
毎日どこかへ行ってはボロボロになって帰ってくるし、海賊王の単語を出せば大人相手にだってケンカを売る馬鹿だ。

「なんで双子でこうも違うモンかねェ……お前もアランを少しは見習ったらどうだ!?」

「うるせェよ!俺はあんな弱虫とは違ェ!」

 兄弟仲も良くない。アランは話しかけたそうにしているのを何度か見かけたがエースが悉く避けているのをみて最近は諦めたようだ。
寂しそうにしていたが、無理に説得したら余計に拗れるとダダンは自分からなにかすることはなかった。

 アランを見送った時より数段不機嫌になったエースはドスドスと音を立てながら森へ入って行く。家事を任せたところでサボるのは明白だ。
口では言うが既に諦めているダダンはエースがほったらかしにした家事をするべく家に入った。




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