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視線の先に




視線の先にある想い
それはきっと…



その視線に気付いたのは、だいぶ前のこと。

みんなでスケートに行ったあの日。
男女でペアになり、滑り方を教わった、あのとき。

わたしの手を取って滑り方を教えてくれながら、彼は時折違うところを見ていた。


その顔はいつものガキ大将の勝ち気な顔じゃなくて。
ほんの少しだけ、胸がざわついたのを覚えてる。


向けた視線の先には、ペアの男子に手を引かれながら、不機嫌そうな顔で滑っている親友の姿があった。 



それからも、ふとしたときに視線に気付くようになった。


教室で話しているとき。
授業中。
昼休み。


気付いたときにはもう逸らされているけれど。 
間違いなく、彼から彼女への視線。


「…もしかしたら」


降ってわいた答えが、明かされることは無かった。


彼が、東京に引っ越してしまったから。


「さみしくなるね」


彼女はそう言った。 
寂しげな笑顔で。

彼の視線は、
鈍感な彼女に届いていただろうか?


「…そうだね、また会えるといいね」
 

そう返しながら、手を繋いで帰る。

わたしは彼女に気付かれないように、
ほんの少しだけ…泣いた。

彼を想って。

 

それから四年後。

彼は再び、帰ってきた。

以前より背も高く、ぐんと大人びた姿。

けど、彼女に向ける視線は、あの時と変わってなくて。


あぁ、やっぱりそうなんだ、と

安堵感と同時に、言いようのない気持ちになった。

そして。



「大野くん!」


屈託なく、彼に笑顔を向ける彼女。

その笑顔は、今まで一度も見たこともない、輝くような笑顔だった。


後から、一足先に再会したときの様子を彼の親友から聞かされて、言いようもなく笑いがこみ上げた。


そして思った。

これからもずっと彼らを見ていたい。
いつか、彼らが結ばれる日が来ても。


だって、わたしは

彼のことも、彼女のことも同じくらい好きで、
同じくらい大切なのだから。



END



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