だってまさか、憧れの先輩がこんなに変態だなんて誰も、誰も思うはずがないじゃないか。


「ね!トビオちゃん、お願いだからこれ着てみよう!」
「着ませんったら着ません!絶対いやです!」
「どうしてさ!」
「どうしてさ!?あんた馬鹿ですか!?馬鹿なんですか!!」
「と、飛雄のくせに二回も馬鹿って言いやがった…」


お前にだけは言われたくないよと叫ぶ及川さんの手には、しっかりと青葉城西高校女子バレー部のユニフォームが握られている。俺だって及川さんがバレーに関しても勉強に対しても頭が良いことは知ってるし、人を馬鹿といえるほど俺は賢くない。そういう自覚はある、悔しいけど。
でも今は、間違いなく及川さんは大馬鹿だ。


「何言ったってそんな女子のユニなんか着ませんからね!」
「いーや着てもらいます。先輩であり彼氏である俺の全ての権利を行使して着させます。オッケイ?」
「何ひとつオッケーじゃねーよ!」
「ちょ、敬語!」


そもそもそのユニフォームだってどうやって入手したのかも謎だ。勝手に盗ってきたんだったら最低だ。ていうかその時点で最高に変態だ。


「しょうがない…じゃあいくらか譲歩したげるから。ね?」
「じょうほ?嫌です!」
「うん、お前絶対譲歩の意味判ってないよね。絶対雰囲気だけで拒否ってるよね。譲歩というのはゆずるということです」
「ほう」
「何でそんなに偉そうなのお前」
「それで、じょうほしてどうなるんですか」


及川さんは仕方がないという風にユニフォーム(上)をベッドにぱさりと置いた。手に残ったユニフォーム(下)を掲げるように両手で広げた。あり得ないぐらいシュールな光景だった。


「下だけでも履いてくれたら満足!」


三秒間その場の空気が固まって、それから俺は掲げられたそのユニフォーム(下)を床へと叩き落とした。えええとうるさい及川さんの足を踏みつけようとして、避けられる。


「何てことすんのトビオちゃん!ひど!」
「ひどいのはあんたの頭ん中です!脳みそ豆腐か!」
「あんまりな言い草だね!?大丈夫だよ、トビオちゃん腰細いから履けるって!俺ポロリも大歓迎だから股下浅いとか気にしなくて良いし!」
「問題はそこじゃねえええ!!!って、ちょ!何ズボン掴んでんですか!」
「お、市松模様とはなかなか渋いトランクス」
「パンツ下げんなあ!」


ズボンとパンツを同時に下げようとする及川さんの手を全力で掴んで止める。仮にユニフォーム(下)を履くとしても、トランクスは脱ぐ必要ねえだろ!
お互いに全力なせいで(こんなことで全力を出すなんてアホみたいだ)、無言の攻防が続く。もはやズボンは膝まで下がり落ちていて、パンツを巡る争いだった。しかしそれも、だんだん及川さんの腕の力が弱くなってきたのを感じた。いい加減諦めたのかもしれない。


「及川さん…ッ、離して、下さい…!」
「離すもんか…!、隙有り!」
「ッは?…うああッ!?」


俺の左足のひかがみから踵までを一直線、及川さんは器用に足の指を使ってなぞった。
次の瞬間気付いたときには、俺は下半身に何にも纏っていなくて。


「……ッ!」
「はーい、すっぽんぽーん」
「…くそっ」
「ふくらはぎが弱いなんてホーントえろい体してるよねー、トビオちゃん。マッサージとかどうしてんの?」
「…ッひ、さ、触んないでくださ…!」
「履いてくれるなら」
「く、そっ!ぅ、はく、はきますから…ッ」


緩く揉まれてぞわぞわする足が解放されて、変わりに目の前にはひらひらと黒いショートパンツ。
舌打ちと溜め息が止まらないのは、どうしようもないだろ?





「うわあ…ナマ足、えっろ」
「…すっげえ食い込むんすけど、これ」
「そうだね食い込んでるね…何?何このフィット感というか…しめつけ感?男の股間に萌える日が来るとは…」
「………………」
「トビオちゃん、ちょ、写メっていい?」
「この変態め!」





激愛ペナルティ
(もはやこの格好罰ゲームの域ですよ)
(お褒めに預かり光栄だね)
(意味がわかりません)



Thx 空想アリア


レイミちゃんからのリクエストで「及川さんが影山に女子バレーみたいな格好をさせたい話」でした。
見ての通り変態な及川氏です。やりたい放題です。私が。
…ごめんなさい!←
「させたい」部分に拘りすぎて履いた後が蛇足っぽくなってしまってますが…つまり及川さんは変態だよってね?(下手なフォロー)そして時系列やら場所やら謎です…多分トビオちゃんのお部屋…
あとトビオちゃんがふくらはぎ弱いっていうのは完全に私の趣味です!すみません!楽しかった!

お持ち帰り、文句、罵詈雑言はレイミちゃんのみ承ります。
リクエストありがとうございました!