*美容師及川さん×大学生影山シリーズ








30日の午前中、及川さんと家の大掃除をした。付き合っているとはいえ一応住まわせてもらってる身だし、テーブルの上からベランダの隅まで、地道に丁寧に綺麗にしていく(キッチンだけは「俺の領域だから」って言われて入れてもらえなかったけど)。いつもは掃除なんて面倒くさくて好きじゃないけど、一カ所綺麗にするたび及川さんがまるで小さな子供にするように笑顔になって褒めてくれるものだからそれが嬉しくて柄にもなく真面目に取り組んだ。及川さんは及川さんでキッチンを時間をかけて綺麗にしたり、仕事の道具の手入れをしていた。午前中やっただけでも大分はかどって、昼過ぎにはほとんど終わるぐらいだった。お昼にしようかと、及川さんの一言で一段落をつける。



「トビオちゃん、あと年内の予定は?」

「えっと…今日はこれから部活で部室の大掃除で、明日は休み」

「三が日は?」

「元旦は夕方の4時から先輩たちの誕生日会兼ねた新年パーティー、あとは休みです」

「そっか。俺は昨日で仕事納めだったし、今年は一緒に年越せるね」



また、嬉しそうな顔。去年は俺が受験で正月でも極力会わないようにしてたから、付き合い始めてから一緒に年を越すのは初めてだ。頭の中で恋人の年越し方法と及川さんを結びつけたらなんだか恥ずかしくなってこたつに顔を埋めた。そんな俺の心情に気付いてなのか、及川さんがからかうように話しかけてくる。


「トビオちゃんどうしたの?顔赤いけど」

「別に、なんでもないです」

「ふ〜ん?」


まあいいけどね、好きにさせてもらうから。及川さんは楽しげに口を歪ませて言った。美形なだけ余計にたちが悪い。


「…一緒に住んでんだから、いつもと変わんないんじゃないですか」

「こういうのは気分の問題だよ。新年早々トビオちゃんと何しようかってね」

「…………」

「あはー、トビオちゃん顔真っ赤!初だねホント!」

「うるっさいですよ」



向かいに座る及川さんの足をこたつの中で軽く蹴った。そしたらここぞとばかりに絡められて、見えない空間で膝から下をいじられる。


「ちょ、くすぐったっ」

「まず年明けたらメールたくさん来るだろうから俺のもトビオちゃんのも携帯の電源切っとくでしょ」

「ああ、そうですね」

「テレビもうるさいからラジオにしちゃおう」



及川さんは次から次へと小さな予定を立てていく。その提案が全て適ったら、きっと俺たちだけの空間が出来上がるんだろうとわかった。


「…及川さん、楽しそうですね」

「そりゃね。飛雄と新しい時間迎えるのとか初めてだから、」

「…?初めてだから、なんですか?」



妙な溜めに、首を傾げる。すると及川さんは俺の頬に手を伸ばして添えた。



「初めてだから、ちゃんと愛してることを示したい」



ね?、と。
今度は及川さんが首を傾けてそう言った。

「…嬉しいです、けど」

「うん?」

「すでに、示されてる場合は?」

「構わないよ、何回だって示してあげる」



だからトビオちゃんも、ちゃんと返してね。


嬉しそうに楽しそうに頬を撫でる及川さんの手を握って、当然です、笑みを隠さずに頷いた。



彩りカウントダウン
(幸せの波にのって時間移動)