「昼ご飯一緒に食べよ」

「…はァ?」



4時間目が終了した空腹の昼時、俺は昼飯買いに行くべく席を立った。
すると、いつもは怖がって話しかけてこないクラスの女子が「影山くん、呼ばれてるよ」と、軽く色めきながらと近づいてきた。

教室前方にあるドアを見ると、見慣れた長身。

「やっほー王様」

来ちゃった。
手を振りながら、にこりと音がしそうな笑顔に、周りにいた女子がまた少し色めきたつ。頬が引きつるのがわかった。


そして、冒頭に至る。

「いや…意味わかんねえし。なんでだよ」
「今日山口休んでてさ」
「そうかよ一人で食え」
「やだなー王様、わかんないの?」
「てめえは王様っつーなっての何回言やあわかるんだ」


売り言葉に買い言葉、くだらない言い争いに月島はゆるりと首を振る。そして俺に少し顔近づけて囁いた。






「君に好きって言ったの、忘れた?」


「…………あ、」


そういえば、先週の水曜。
部活が始まる前の無人の体育館。
月島は一言、でも確かに俺に「好きだ」と言った。



「お、ぼえて、ねえ」
「嘘。顔赤いよ」
「………っ」
「ねえ王様。これはお誘いだよ」


じわじわじわ。顔に熱が広がる。
教室の喧騒に紛れて、月島の声が鼓膜に響いた。



「昼飯一緒に食べよ」



顔が、熱い。
こんな、昼飯に誘われてるだけで。



「…ねえ、聞いてるの?」
「……俺、購買行くから、先、」
「は?」
「………先、屋上行ってろ」
「…りょーかい」

さっきとは違う、にたりといやらしく笑う月島が気に入らなくて、わざと肩をぶつけて隣を通った。




高鳴る胸と笑う君
(なんでこんな熱いんだ)
(第一段階クリアってところかな)