!眼球舐め




「影山の体でどこが一番好きかって聞かれたら、うん、やっぱり顔だよ」



国見は丁寧に俺をベッドの上に倒してから、一度だって訊ねたことのない質問にいつもの冷静な表情で答える。お前面食いかよ、言おうとしたけどそれではまるで自分の顔をかっこいいと思ってるみたいになるからやめた。お前と大差ねぇだろ、とだけ返す。


「大差ないことないよ。影山の顔のパーツってどれも絶妙な大きさとバランス保ってくっついてる」

「くっついてるってお前」

「イケメンは及川さんみたいな人のことを言うんだろうけど、なんか影山は違うよね」

「違う?」

「なんていうかね、美人」

「ん、」


美人なんて言われてもピンと来ない、国見の両手が俺の顔を包んでされるがままにキスをする。感じる必要もないのに背徳感に近い感情が背中を走って、腰が疼く。こいつとキスをするときは、いつもそうだった。


「…なかでも、目、かな。惹かれるっていうの?」

「目つき悪ぃだけだ」

「それも相乗作用があるんだ。黒目も白目もきれい、目尻すら可愛い」

「は、可愛いとか病気だろ」
「ひねくれないでよ」


国見に包まれたままもう一度顔が近付く。キスをするのかと目を閉じたら、開けてて、声が降ってきた。互いの目を見ながらキスをするつもりか、趣味の悪い。閉じたばかりのまぶたを開くと、見えたのは。


「…ッひ、!?」

「…ん」

「っう、あ、」


べろり、目玉の剥き出しの部分に圧力をかけるように小さく押されて、涙が角膜を覆う。瞳を開けた先に見えたのは口の中、並ぶ白い歯と舌。

国見が、俺の右目を、舐めてる。


「いや、だっ…あ、」

「しょっぱ」

「あ、や、くに、み…ッ」

「あれ、泣いちゃった?」


怖かった?

国見は何でもないような顔で首を傾げた。俺は気付かない内に縋るように国見の腕を掴んでいたけど、混乱で離すことができない。怖いなんてことはない、だけど。


「お、前…いきなり何すんだ…!」

「影山がきれいだったんだよ」

「んなもん理由になんねえよ!」

「いいじゃん、怖がらせたわけじゃないし。むしろ」

「あ?」

「興奮してない?…顔、真っ赤だけど」

「……!」



怖くないけど、この感情。
言い知れぬ高揚感があるのは確かだった。


「俺、好きな子の目とか食べてみたいなあとか思う人間なんだけど、」

「食べ……っ!?」

「半分冗談だよ、舐めるだけ。そういう性癖」

「……せーへき」

「自分で変わってるっていう自覚はあったけど、影山も大概だな」



左目も同じことして良い?


顔をずらして耳元で囁かれるお願いに目眩がする。俺の首から上は、既に国見に侵されてしまっていた。


「性感帯になるまで影山の目は俺が飼うからね」


なんとも幸せそうな、人の悪そうな顔をして微笑む赤い舌の持ち主は、俺のこめかみを掴んで目蓋を噛んだ。
召しませキャンディー
(剥き出しの脳みそを頂戴)