万人にわかりやすく説明するとすれば、王様は大食漢である。つまり大食い、食いしん坊。付き合いたての頃こそ差し出されたお菓子でも「これ食べて良いか?」なんて聞いてきたくせに、最近では「もらうぞ」とすら言わなくなった。菓子が出されたらいそいそと食べ始めて、僕がトイレにでも立とうものなら戻ってくる頃にはもう空だ。ものを食べてる王様を見るのは嫌いじゃないから僕がお菓子を食べられないのは問題じゃない。だけど、食欲に忠実すぎるのも問題だった。 「つーきーしーまっ」 「………ちょっと、王様」 「つーき、しまー」 「…王様退いて」 「王様って言うなばかやろ、えいっ」 「いたッ、ちょ、ホントに退いてくんない?」 今の状況を簡単に説明する。 僕の家、フローリングに敷いたカーペットの上、それに横たわる僕、そして僕の腰の辺りで馬乗りになる上機嫌な王様。 今日王様に出したお菓子は、父さんが出張土産に買ってきたフランスのチョコレート。 すでに大半の人がお気付きかと思うがこのチョコレート、洋酒がふんだんに使われているもので。どうやら酒に弱いらしい王様は箱に入っていたチョコの半分を食べて、すっかり酔っぱらってしまったらしかった。 「君さ、自分の苦手なものぐらい把握しておいたら?」 「ん〜…むずかしいこと言うなー!」 「難しくないから、今の何にも難しくないから!」 あまりの頭の弱さというかおつむの弱さに声を荒げてしまう。僕に完全に体重を預けてぺったりとお尻をつけ座る様子、所謂女の子座りをして両手を僕の胸辺りに置いている王様を見上げるのはかなり貴重だしぶっちゃけ絶景だと思う。だけど彼の酔い方は完全に絡み酒だし、そして何より健康男児は重かった。いつも僕の上に乗らせる時は遠慮してるのか腰を浮かせて体重をかけないようにしてるのに、今はそれが全くない。この状態でかれこれ1時間、そろそろ腰が辛くなってきた。 「王様、ちゃんと構ってあげるから退いて」 「や」 「や、じゃないよ、可愛いけどさ」 「月島、うるさい」 「誰のせいだと、って、ん」 「ん、んー」 不意打ち。上機嫌を隠さない王様はおもむろにキスをしてきた。唇と唇が触れ合う程度のバードキス。それを何回か繰り返した後、僕の唇を舌でつついたり舐めたりされる。酔っているから積極的とかそういった感じはしなくて、ひとつの予想が持ち上がる。 「王様、ん、って、キス魔…?」 「ん、むー、ぷは、知ぃらね」 「む、…絶対そうでしょ」 「ん、っんん!?」 いい加減じれったくて、王様の頭を固定して深く口付ける。そうしたら今度は向こうが不意打ちを食らったみたいな顔になって、やっぱり王様はキス魔なんだろうと思った。 素面の君はディープキスの方が好きなんだよ。 だから唇同士を掠るだけじゃその内物足りなくなってくはずだけど、頭を固定した時点で目を見開いて驚くってことは僕とキスしたいっていう意志はあんまり無かったってことだよね。 「…それはそれで、切ないけど」 「?、っふ、む、ぷは…ッ」 「…ねえ、今の気持ちよかった?」 「…はずかしいこときくな、ぼげ」 顔を真っ赤にして瞳を潤ませて。それがどこまで酔った影響なのかわからないけど、そうじゃなくても王様の様子は一目瞭然だった。 「つきしま、今の、もっかい」 「…任せて」 一回ハマったら、抜け出せない。 王様が忠実なのは食欲だけじゃなくて、性欲もだ。普段以上に、今は。 「んぅ、ん、つきし、ま」 「、何?」 「俺とキスすんの、好き?」 「…当然」 それ以外に答えなんて見つからない、そんな意味を込めてキスをしたら可愛らしくちゅっと音をたてて頬にキスを返された。親愛の情を一切隠さず表現されて綻びる。腰のしびれなんてどうでもよくなって、王様の背中をかき抱いた。 放蕩ロトスコープ (…頭いってえ) (王様おはよ、昨日はゴチソウサマ) (……は!?) 徠ちゃんからのリクエストで「キス魔な影山」でした。 素敵なリクエストに反してキス魔っぷりが…なにこれ…薄いですが…愛は詰めました…!ぐっ 私は何故か月影をすぐ個室に詰めたくなるのを直した方がいいですね(^q^) お持ち帰り、文句、罵詈雑言は徠ちゃんのみ承ります! リクエストありがとうございました! |