10月10日の朝練、

大地さんがサポーター。
スガさんがフェイスタオル。
龍がうまい棒2本とバースデーソング(音痴)。

放課後の練習、

翔陽がガリガリ君。
影山がぐんぐんヨーグル。
月島がメロンパン。
山口が焼きそばパン。

あと、潔子さんがシャーペンと、縁下がボールペン。

これが今日、俺がみんなから貰った誕生日祝い。
先輩たちは朝から祝ってくれて、すっげー嬉しかった。おめでとう、おめでとうって言われる度に胸がほこほこして、ありがとうありがとうって言い返すのにまたあったかくなった。




だけど。






「俺、旭さんから何もされてねえ」
「…その言い方は誤解を生むよ、西谷」
「んなんどうでもいいです!」


誰よりも祝ってほしい人。
あの月島ですら言ったのに、旭さんには、俺はまだおめでとうの一言すら言ってもらえてない。
物をくれなくって良い、それこそどうでもいい。俺はただ、俺の存在がこの世に生まれた日を、この人にも喜んで欲しいのに。


「…旭さんは俺のこと嫌いになったんですか」

「はあ!?そんなわけないだろ!!」

「じゃあなんで何も言ってくれないんすか!!」

「いやー……俺も一つ考えがあるんだよ」

「えっ」

「でも西谷喜ぶかがなー…」

「喜びますよ!旭さんからなら何でも!」

「んー…じゃ、ちょっと目つぶれ」

「うっす!」



嫌われちゃったのかと思ってたのが払拭されたから、安心して言われた通りに目をつぶる。
頭上から「そんなに力まなくても」と笑う声が聞こえて、それから。



「…っ!?」

「あ、目開けんなよ」

「い、い、今…!旭さん今…!」

「あー、うん。やだった?」







俺との初キス。





頭をかきながら、恥ずかしそうな照れたような顔。
嫌なわけがない、ていうかなんだこれ、うわ、うわ、うわ。顔あっつ!!




「西谷顔真っ赤」

「あんたのせいッスよ」

「よかったよ喜んでもらえて」

「当たり前だ!あーもう、旭さん大好きです!!」

「おわっ、危ねッ」




ノリと勢いだけで旭さんに飛びつく。俺よりもでかくてがっしりとした体は、今日みんなに言われたどの「おめでとう」よりも暖かい気がした。




「西谷、生まれてきてくれて、ありがとな」




俺も、お前が大好きだよ。



太陽に、包まれた。




夕焼けと朝焼け
(相思相愛、一心同体)
(気持ちが伝わるなら何だって言う)