まぁ、俺は馬鹿だ。自他ともに認める馬鹿だ。こんなことを認めるのも認められるのも情けないけど、とにかく俺は馬鹿なんだ。


「ねえ、ちょっと!なんでみずきが応援に来てるわけ?私聞いてないんだけど!」

試合が始まる直前、マネージャーの伏見がそう騒ぎ始めた。伏見が指差したグラウンドの端には、確かに寒そうに肩を抱いた佐伯が立っていた。

 伏見が騒ぐのも無理はないのだ。こんな弱小サッカー部のただの練習試合の応援にくるのは、プレイヤーの彼女以外にはまずいない。その証拠に、ベンチと反対側のコートの側には3、4人の女子がきゃあきゃあ言いながら、自分の彼氏の名前を叫んでいる。佐伯はその彼女集団から少し離れたところに1人で立っていた。


「この前、応援に来るって言ってたよ」

スパイクの紐を結び直しながら伏見にそう答える。本当に来るとは思っていなかったけど、よくよく考えれば当然だ。佐伯には、サッカー部の応援に来る理由がある。もちろん、この間の俺との約束以外に。

「それ、金出にだけ言ったの?」
「うん、今度の試合応援行くって」
「ふぅん…そっか、じゃあ誰かと付き合ってるとかじゃないんだね。びっくりしたぁ、私聞いてないよ!って思ってさ」

 伏見と佐伯は中学からの友達であるらしい。クラスが違うから、学校で一緒にいるのはあまり見ないけど、たまにテスト期間なんかに一緒に帰っているのを見る。

 佐伯の目的だって、あそこに立っている彼女集団と同じだ。…どうせ、伏見だって知っているくせにな。そう意地悪く思ってみたけど、性に合わなかったからやめた。

 スパイクの紐をきゅ、と結んで立ち上がる。パン、と背中を叩かれ、いってえと叫ぶと、この軟弱者!しっかりやってこい!と伏見が答えた。伏見はサッカー部の母ちゃん的存在で、我らがキャプテンの彼女でもある。どいつもこいつも、くそっ。


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どうかずっとそのままで




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