小説 | ナノ





立海大附属中3年で、テニス部の鬼と噂される真田弦一郎を幼なじみに持つ私には、最近気になっている子がいる。それは、明るくて調子が良い性格に黒髪の癖っ毛、結構単純で好戦的で、よく弦一郎に鉄拳制裁を喰らっている切原赤也くん。

その子から告白されたのは一週間位前だった。赤くなりながら「先輩のことが、好きっス」なんてセオリー通りの台詞を言う姿が可愛くて、すぐに「いいよ」と返事をするのが勿体ないから沈黙のまま様子を窺っていたらダッシュで逃げられた。断られたのかと思ったのかな、そんなことしないのに。



まあ良い、とりあえずそれから避けられまくっていることに若干の不満を覚えつつ帰り道。なんだか他校の奴らに囲まれている赤也くんが視界に入ってきた。あ、あれは完全に絡まれてる。まあ赤也くんは弦一郎が怖いからあんまり自分から喧嘩をふっかけたりしないけれど。何を言われたのかはわからないけれど彼の目が充血するのが見えた。

あーあ、このままだと赤也くんに絡んだ可哀相な奴らは全滅、後日赤也くんは弦一郎に制裁、かな。一瞬それも別に良いか、なんて思ったけれど結局私は可愛いあの子が好きなわけで。あの可愛い顔が下らない理由で腫れ上がるのは少し嫌だ。ああもう、仕方ないなぁ。




「…赤く染めてやろーか…?」

「赤也くん、だーめ。」

「せ、先輩っ!?」





絶賛決め台詞中だった赤也くんと他校の奴らの間にするりと入って笑う。喧嘩相手の表情が焦りに変わった。そうだよね、この近隣だと弦一郎は有名だから。絶対に敵に回しちゃいけない人物、なら嫌でも耳に入るのはその幼なじみ、つまり私の存在。まあ、知らなかったら知らなかったで喧嘩になってもこっちが勝つだろうし弦一郎には私を守ったとでも言えばきっと赤也くんは殴られない。うん、何も問題はないね。





「な、何やってんスか!危ないんで下がってて下さいよ!」

「…ごめんね、ちょっと黙ってて。…赤也くんに絡んだ皆さん、どうもこんにちはー。全く、こんな道端で絡むなんてたるんでるなぁ、…ねぇ、どっか行ってもらえる?」




にこり。この場が凍ってしまう位の、100%の絶対零度を。これは弦一郎の幼なじみというだけで様々な問題に巻き込まれ続けてきた私に、幸村くんが教えてくれたもの。何かを感じ取ったのか、他校の男達は静かに背を向けて歩いていった。感謝してほしいな、君達が無傷であることに。

ふう、と溜め息をひとつついてから赤也くんの方を振り向く。幻滅したかな、と思ったけれど意外にも彼は拗ねたような顔をしていた。充血はいつの間にか治っている。早いな。




「…先輩、ずるいっス」

「ダメでしょ赤也くん、喧嘩したら弦一郎に怒られちゃうよ」

「…なんで、なんでアンタはそんなにかっこいいんだよ、俺…、男なのにっ、先輩のことが好きなのに、守られるなんて…かっこ悪ィ…」

「え?」





ぐしゃり、自分の頭を手で押し付けて上目遣いでそんなことを言われたら、なんかもう可愛くてたまらない。うーん、どうなんだろう。私のこんな本性を垣間見せても好きだって言えるこの子は実はかなりの大物なのかもしれないな。ますます好きになっちゃいそうでちょっと怖い。あ、良いこと思いついた。




「…弦一郎には黙っててあげる、でもちょっとおしおき。赤也くんを真っ赤に染めてあげる」

「え、鉄拳制裁するんスか…?先輩には無理っスよ、副部長のアレは」

「まあまあ、とりあえず目を瞑って歯を食いしばって?」




うう、なんて言いながらも私の言う通りにするのがもう最高に可愛い。あれ、私別にSじゃなかったはずなのにな。まああれだ。弦一郎の幼なじみや幸村くんと仲良くやっていくには図太い神経を持ち合わせてなきゃ無理なんだよ。性格がひん曲がっていることは自覚してる、だからこそ真っ直ぐな君に惹かれる。


そんなことをぐるぐると考えながら赤也くんの頬っぺたに可愛らしいキスをひとつ落とした。





「うひゃっ?…え、あ……えええ!?」

「想像以上の反応をありがとう」

「い、今…っ、センパイ、俺に…っ」

「うん、良いかんじに真っ赤に染まってるよ?赤也くん。」







(真っ赤に染めに来ました)





やばい楽しいどうしよう。そのまま上機嫌でその場を去る私を、耳やら首まで真っ赤にした赤也くんが一生懸命走って追いかけてくるまであと20秒。(ああもう本当に!必死で可愛いなぁ!)




END



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