小説 | ナノ





最近、副部長の真田弦一郎が変だ。なにもない空間に視線を走らせるときもあれば、何やらぼんやりしているときもある。まるでそれは物思いに耽っているようだった。


「あれは、恋じゃな」

「……弦一郎が恋か?」


コート上のペテン師こと仁王雅治と参謀の柳蓮二は2人でコメントしずらい一件を取り扱っているかのように顔をしかめた。部活前、ユニフォームに着替えている間の最中の話である。周りには他レギュラー陣がいる。ただし、幸村と真田以外ではあるが。


「真田副部長が恋!?相手は誰なんスか!!」

「いやぁ、一筋縄じゃいかない相手なんじゃねぇか?」

「全く……人の色恋沙汰に首を突っ込んでいる前に早く着替えた方がいいのではないですか?」

「そうだぜ、遅れるのが一番悪いだろ?」


わいわいと真田の思い人に対し、邪推する面々だった。だがしかし、事態は急転することになる。



コートに向かったレギュラー陣は幸村が何かを考えるようにベンチに座っているのに目を止めた。最近の幸村もなんだか変なのだ。苛立っているような鋭い空気が漂っていた。
が、うつむき、髪で顔が隠れたまさにその瞬間だった。弾かれたように立ち上がった幸村は、漂っていたはずの空気はどこにやら、落ち着いた雰囲気に変わっていた。そして、コートから駆け出していってしまった。


「え、ちょっ、幸村君?!」

丸井が声を掛けたが聞こえなかったのだろう。そのまま駆けていく。全員が揃って、ポカンと口を開けてしまったが、すぐに追跡し始めたのは、仁王、丸井、赤也、柳だった。


「ま、待ちたまえ!」

「おい!全員行くのかよ!」


勿論、なんだかんだを言っても柳生とジャッカルはついていく。そして、幸村が走った先にいたのは、真田だった。そして、真田が手を差し出し、幸村はそれを優しく包み込んだ。
影から眺めていた、6人は揃って固まった。しかしながら、隠れている場所からでは声は聞こえない。ガタガタ震えながら、丸井は周りを見上げた。


「ちょっ、と……見たかよ。いま、の……」


丸井は声を失った。柳は開眼して固まっていた。そして、それ以外の面々も膠着していた。


「……あり得んぜよ、幸村と真田はそういう仲じゃった……」

「ゆ、幸村部長と……真田副部長が……」

「……マジかよ」


凍りついた空気をよそに、幸村は手を握ったまま切なそうに真田へ微笑む。ようやく膠着状態から回復した柳生と柳は、冷や汗を拭いながら呟いた。


「確かに、真田君と幸村君には私たちにうかがいきれない程の繋がりがありますし……そういった方向に発展してもおかしくありません」

「そうだな……あの二人だ。悪いことになるとも思えない。俺らだけでも味方にいた方がいいだろう」


しばらくして、幸村がコートに戻ってくると、その場にいたレギュラーが暖かく見守っているような目を向けた。理由を聞いた幸村が大暴れしかけたのはいうまでもないことだった。






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シリアスの裏側では
こんなことが起きていた
ようです。笑
しょこちゃんありがとう
ございました!



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