丸井君はボレーがすごいと聞いたのはその日の昼休みだった。

「妙技、とか言ってな。ネットの上をコロコロ転がしたり、芸道みたいで面白いなりよ」
「へぇ、すごいね!」

隣の席の仁王君がそう私に話した。
何故私が丸井君の話を仁王君から聞いているのかというと。
私は丸井君が好きなのだ。
それを知っている仁王君は私にちょいちょい丸井君の話をしてくれる。
面白がって…とかはないと思う… 。

「ちーっと見に来てみんしゃい」
「う、うん…」

テニスコートにはあまり近づいたことがなかった。
たくさんの女の子がいて、近づきにくいっていうのも確かにある。
けど1番は私なんかが見に行って丸井君は迷惑しないかな、と思ってしまうから。

「こ、こそっと見に行ってみよう…!」



放課後。
やはり、周りには女の子。
少し身長が小さめな私はコートの緑さえ見えない。

「きゃー!!!」
「妙技、綱渡り!」

丸井君の少し低い声が聞こえてくる。
噂のボレーを成功させたのだろう。

「少しだけでも…」

なんとか女の子達をくぐり抜けちらっと見えた赤い髪。
ちょうど体を屈ませボレーを打とうとしていた。


「あ、やべミスった」

しかしボールはそのネットを越えずに引っかかる。
丸井君はだめだなーなんて言いながら首を回しているが私はそれどころじゃなかった。
仁王君の丸井はボレーがすごいんじゃ、という一言が思い出される。
いや、確かにミスは誰にでもある。
うん、そうだけども。
私が見る前は確かに成功していたのだ。

「私のせいだ!」

そこからは早かった。
私は一目散にコートから離れ目的地も、なく駆け足で駆けた。



適当に走ったところで聞こえてきた某通信アプリの通知音。

"丸井のボレーは見れたか?"

仁王…こいつ、今気にしてることを…!

「もう絶対見に行かない」

そう打つ。
送信してから捉え方によっては…と、考えたが送ってしまったものは仕方ない。
一つため息をついてかがみこんだ。

遠くから見るだけでいい、そう思ってた。

「欲張るといけないんだよねー」
「あれみょうじじゃん。こんなとこでどうしたんだよ」

赤い髪。
さっきまでコートにいたでしょ。

「丸井君…」

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続きます!!
 

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