「付き合う事になったんだっ…」

恥ずかしそうにそう言う幼なじみに

「そっか、よかったじゃん」

そう言った。




*




「俺、友達なまえに告おうと思うんだ」


幸村君がそう告げた日は少し雲が多い日だった。
雲の隙間から日が少しさす。

幸村君と二人で日直だったため、みんなより少し遅い下校となった。
多分帰りは幸村君と一緒になるだろう。
そんな事ばかりが頭の中にあって、けど、その言葉が一瞬にしてそれを壊す。

「友達なまえって…」

友達なまえなんて名前あの子しかいない。

「あ、幼なじみらしいね。」


そう、幼なじみ。
頭がよくクラス委員もしている。
幸村君との接点が分からない。


「みょうじのおかげだよ。すごく感謝してる」


あ、そうか。
私がメアドを教えたんだ。

メールするきっかけが欲しかったし、友達なまえも欲しいって言ったから。


他の誰も名前で呼ばないのに、私のことは名前で呼んでくれてる。そんなことが嬉しかった。

着信音が聞こえる度一喜一優した。

少しでも自分に可能性があるんじゃないかって、自惚れてる自分もいた。

でも違った。


「…いつから?」


口に出た言葉は多分それ。
無駄に渇ききっていた。


「いつからだろ…?わかんないや」


幸村君の笑顔が胸を刺す。
涙が出そうになった。


「そっか…」


いつからだっけ?
友達なまえのことも名前で呼び始めたのは…
































次の日は晴れた。

放課後になってもずっと太陽は隠れない。

今日の日直が休みだったため、なぜか私が一人でやることになった。


昨日は幸村君も一緒だったのに。


花の水を変えるため花瓶を持ち一回廊下へ出る。





「好きなんだ…」


そして見た光景。





幸村君は真っすぐ友達なまえを見て、友達なまえは顔を赤らめながら少し下を向く。

ドア越しに見える二人は遠かった。




一歩引いて壁にもたれ掛かってそのまましゃがみ込む。
下唇を少し噛むと涙が溢れた。




なんで私じゃないの?
なんで友達なまえだったの?






気付いてたのかもしれない、幸村君はきっと私の気持ちには答えてくれないって。




だけどそれでも好きだった。


あそこに自分の姿を描きたかった。


気持ちのやり場がない。





「……好き……だった……」




呟いた言葉は夕陽に染められた。


























『よかったじゃん』って言える練習しなきゃいけないな。
今のままじゃどうも言えそうにない。







これが合図で私の気持ちに蓋を作る。










*END*
 

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