回りの風景はだんだんと変わっていくけど、私はここから動かない。
ここだけ時が止まった、とかそんな表現が似合うのかもしれない。
待ち合わせから1時間経った。
あの人があの子と会ってるのは知ってる。
けど、私は待ち続けてる。
なんでこんな無意味なことするのか。
多分それは自分にどんな形でも目を向けて欲しいから。
あの頃はよかった。
いや、よかった?
自分から告白して、実った時はどうにかなるんじゃないかって思った。
けど、それは、その時で。
あの人には本当に好きな人が出来てしまったんだ。
私なんかとは比べものにならないくらい。
とっても大切で、失いたくない存在。
けど、あの人は優しいから。
きっと、私を捨てられないんだ。
それに甘えて私は彼女という位置付けに居続ける。
辛くないって言ったら嘘になる。
話す度にトクンと跳ねた心臓は今は苦しくて焼けるようで堪らない。
(あ、2時間経った。)
ふと顔を上げると愛おしい人の顔が見える。
人混みの中でもすぐに見付けられるくらい貴方が好きなのに。
どうして私だけなの?
「……ごめん。」
「いいよ。待ってない。」
「待ち合わせから2時間も遅れてる。」
「来てくれただけで嬉しい。」
もう、いい子ぶっても意味はないのに。
この人の気持ちが揺らぐことはないのに。
少しでもこっちを見てくれないか、気にしてくれないか、と、考えてる自分がいる。
(いい子ぶる…)
「…今日はなんで呼んだの?」
「話があったの。」
とっても大切な話が、そう言うと彼は目を見開く。
一方通行の恋なんて、
待っていても向こう側から来ることはない。
だったら私が壊れてしまう前に、
「今まで、…ありがとうっ。大好きだった…。」
私の道の道は意外と脆く、足場が崩れてしまった。
一方通行の道にルールを破って入ってくるものはいない。
*END*
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