そんな事を気にしようと、 
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「おはよ、仁王君。」



目を覚ますとみょうじの顔。
そういえば俺はまた屋上でサボってて…

いつの間にか寝とったんか…。


「…おはようさん。」

ムクッと体を起こす。
時計を見ると針は12時前を指していた。


「もう昼前か…。」
「あ、それでさ。」


そう言ってみょうじは俺の隣に腰掛けた。


「仁王君お弁当持ってきてないって聞いて。」


二つの弁当箱を俺の前に示したみょうじ。


「作ってきちゃった。」
「…仕事とかは…?」
「ん?あぁ、暇な時に作ったから。」


そう言ってにこっと笑った。


「ありがとうな。」
「いえいえ、お口にあわないかもしれないけど。」


布に包まれた弁当箱を受け取り結びめを開き蓋を開けた。
食材がきれいに弁当を彩る。


「いただきます。」
「どうぞ。」

適当に一つおかずをとり口に運んだ。


「…どう?」
「んまい。」
「よかったぁ…。」
「それにしても、誰に俺が弁当持ってきてないって聞いたんじゃ?」
「あ、誰にってわけじゃないんだけど……、クラスメートにね。」
「クラスメート?」
「仁王君いつもお弁当持ってきてないから…みたいなこと聞いたんだよね。」
「…ほぉ。」
「あ、ごめん。もしかしてこうゆうの無理な人?」
「いや、そんなことはなか。」
「そっか。じゃあまた作ってきていい?」
「お前さんの迷惑じゃないかぎり作ってきてほしいぜよ。」
「うん!」


こうやって嬉しそうに笑う顔も、お前を気になる原因の一つなのかもしれない。





























































































少し時間を巻き戻した話。






去年の久しぶりに学校へ行った日のことだった。


「おはよー、なまえちゃん!」
「それかわいいね。どこで買ったの?」
「なまえちゃんっていっつもオシャレだよねぇ。」

「…あ、ありがとう。」


久しぶりの学校で一人浮いたらどうしようと思ってたあたしにクラスメート、ましてはいろんなクラスの子が話しかけてくれたのは幸いだった。
久しぶりの学校は雰囲気もあまり変わっておらず。
ただあたしのいない間に席替えをし、隣の席の子が仁王雅治という子に変わっていただけだった。






この時はまだわかりたくなかったんだと思う。
芸能人という飾りがなくなったときのあたしの価値なんか。



「なんかなまえちゃんがスカウトされた会社。めっちゃ大手企業らしいよ。しかもばんばん売り出すって。」
「えー!じゃあ今のうちに仲良くしといたら売れるようになったらあたし達友達としてテレビでれちゃったり!」
「それはないでしょ。けど友達になってて損はないよねー。」
「でもなまえちゃんスター気取りじゃない?あたしはテレビ出てますけどなにか?みたいな?」
「あー、わかるー。アハハ…」






わかってた。
それくらい承知の上だった。

芸能人っていう飾りがあたしからなくなったらこの学校に居場所がなくなるんだろうという現実に初めて目を向けた。

こぼれ落ちそうだった涙をぐっと我慢した。


現実に負けるのが怖かったから。









「お前ら。」

突如聞こえた声。






「あいつが芸能人じゃなかったら友達辞めんのか?そんなんであいつと友達やってあいつが傷付くと思わんのか。」
「……仁王君…、」



「最低な奴らじゃな。」






足音がだんだん近付いてきた。
あたしは近くの物陰に隠れる。
ドアが開く音がして、
足音はだんだん遠ざかっていった。

そっと体を出し後ろ姿を見る。
銀色の髪が風になびいていた。


「……っ…、」




あたしは教室に入る。



「!、なまえちゃん…。」
「あたし…、こうゆう友達はいらないからっ…!」


それだけ言うと教室を飛び出す。
今まで言えなかったこと。

きっと、それは仁王君のおかげで言えたんだ。







そして、その何ヶ月か後の話。




「お願いしますっ!」


あたしは頭を下げた。


「…この売れてる時期に休むのがどれだけ大変なことかわかってる?」
「…はい……。事務所には悪いと思ってます…。進級するまででの3ヶ月でいいんです。」
「…本当に大変よ?それでもいいの?」
「…覚悟は出来てます。」
「最近話してくれる男の子が関係してるのかな?」
「………。」
「フフッ、まぁ、そんな覚悟が出来てるならあたしから社長に話しとくわ。」
「!、ありがとうございますっ!」
「でも、そんなにすぐには休めないわよ?」
「はいっ!」


もう一度頭を下げなおした。




進級までの3ヶ月。

それだけの間だけ。

芸能人じゃないあたしで、仁王君といさせてください。









































































「ここらへんよく学校来るのぉ。」
「まぁね。」
「まぁ、俺にとっては嬉しいぜよ?」
「……え?」
「プリッ」
「フフッ、仁王君それおかしいよ。」
「お前さんも言ってみんしゃい。プリッ。」
「…プリッ?」
「イントネーションが違うぜよー。」
「えっ?」



みょうじさんが妙に明るい気がする。
なんかあったんか…?







「……なんかあったんか?」
「えっ…?」


図星か…?


「…話してくれんかの?」


みょうじさんに問い掛ける。


「…な…なんにもないよ。」
「俺には話せんか?」
「……っ…、」
「……やっぱり言いたくないこともあるよな。」







「仁王君はっ……!」


みょうじさんが声を上げた。









「…仁王君は……あたしのこと……芸能人のあたしのことどう思う…?」
「芸能人……?」




何を言ってるん…?







「…ごめんっ!気にしないでっ!…あ、後少しで進級だねっ。」




悲しそうな顔はそのことに関係あるみたいじゃな。

知りたいんじゃ、お前さんのこと。








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