例え君が、 [ 1/5 ] "さぁ、今日も始まりました、●ステ。今週のゲストはこの人。人気急上昇中みょうじなまえさんです" アナウンサーの声が部屋に響いた。 テレビのチャンネルをかえたらたまたまやっていた番組。 みょうじなまえは、同じ立海大付属高校に通っている。 彼女との関わりは去年同じクラスで一度隣のクラスになったことがある。 それだけだ。 テレビに出るようになってから学校もちょくちょく休むようになった彼女。 そんな彼女が気になるのは彼女が芸能人だからなのではないと思う。 しいて言うのであれば、時々見せる悲しそうな顔が気になってしょうがないというところだ。 途端、 ケータイが光だしディスプレイには丸井ブン太の文字。 メールを開き内容を読む。 「くだらんのぉ……。」 返信をせずにケータイをベットの上にほうり出した。 そしてそのままベランダに出ててすりに体を委ね夜空を見上げた。 同時刻、 みょうじなまえテレビ局の一室から空 を見上げていた。 何を考えて見上げたわけではない。 ただ目を向けた先に空があった。 それだけの話だ。 「はぁ……。」 小さくため息を吐く。 「なまえー?」 「あ、はい。今行きます!」 急いで座っていた椅子から立ち上がり呼ばれたほうへ走って行った。 「昨日の●ステ見たかよぃ?!みょうじなまえ出てたんだぜっ?」 「見とらん。」 「出てるってメールしただろぃ?!」 「もう寝とったなり。」 「はぁっ!?いくらなんでも早過ぎだろぃ。」 「え?仁王先輩●ステ見てないんスか!?」 「もったえねぇよな。せっかくみょうじなまえ出てたのに。」 「ってか、みょうじなまえが同じ学校にいるって実感湧かないッスよねー。」 「今日来てるらしいぜ。」 「まじッスか!?ちょ、後で見に行きましょうよっ!!」 「いいぜ。」 ほぉ、 今日は来てるんか…。 「仁王先輩も行きます?」 「……ペテン師そんなに暇じゃないぜよ。」 「はっ、今日くらいペテン師捨てろよぃ。まぁ、いいや。早く部活終わんねぇかなぁ。」 今日は学校が一段と騒がしくなるのぉ。 それくらいのことしか考えてなかった。 「はい、今日の授業はここまで。解散。」 その言葉と同時に俺は目を覚ます。 隣の席の女子が話しかけてきたが曖昧な返事しか出来なかった。 俺はとりあえず屋上へ向かう。 そこが俺の場所だから。 もう春のわりにまだ風は肌寒い。 はやく春の風が吹いてほしいものだ。 「わっ!」 突如聞こえた声。 ドアの死角に立っていた人。 それは昨日テレビで見たあの人だった。 「あ…、仁王君か……。びっくりした…。」 「俺のほうがびっくりしたなり。」 「ふふっ、仁王君いっつもここ来てるでしょ。」 「え?」 「あたしも学校来るとここに来るんだ。昼放課とか…自習の時とか。それで何度か仁王君見てるの。」 「ほぉ…。」 「あたしはいっつもそこにいるけど仁王君がいるとこから調度死角だもんね。」 「声かけてくれればよかったんに。」 「だっていっつも自分の世界に入ってそうだから声かけづらくて。」 そう言ってみょうじはふっと笑う。 みょうじも普通の女と変わらん。 「ここで話すのは初めてじゃな。」 「そうなるね。」 「はじめまして。」 「ふふっ、はじめまして。話すのは去年ぶりかな?」 「この会話おかしいぜよ。」 「仁王君から始まったんだよー?」 常に笑顔で話が上手くてそんなみょうじからは想像出来ないような悲しそうな顔。 お前をここで見たんは今日が始めてじゃないんじゃよ? お前をここで見た時からお前のことが気になっとったんじゃ。 「あ…、もう一分前だ…。」 その言葉と同時にみょうじはまた悲しそうな顔をする。 あの時見た顔と同じ顔。 「教室……戻んなきゃね…。」 その顔がやけに気になる。 俺は考える前に立ち上がってみょうじの腕を掴んでいた。 「次の時間…、サボって俺と話さんか?」 その言葉にみょうじは目を見開いたがすぐに笑顔を作った。 「うん!」 どうして俺はそう言ったのか。 多分… みょうじの悲しそうな顔が引っ掛かったんだと思う。 「仁王授業さぼってんなよぃ。」 屋上でみょうじとサボり話してたがみょうじはこのあと仕事があるからと帰って行った。 「ってかさ、教室にみょうじ見に行ったのにいなかったんだぜ?」 「……残念だったのぉ。」 なんとなく屋上でのことは誰にも言いたくなかった。 「しかももう帰ったとか聞いたし。次来るのいつなんだよっ!」 「明日も絶対来る!」 「……さぁ?いつじゃろうな?」 「ほんっと仁王そうゆうこと興味ないよな。」 「プリッ」 俺は明日も屋上に行こうと誓った。 . |