「…仁王君お昼そんだけ?」
「おん」

ゼリーを手にする仁王君。
テニス部のみんなはのお弁当だったり購買で買ったものを持ち寄ってるのに仁王君はそれだけ。

「少なくない?」
「じゃあなまえが作って」










「うーん、…別にいいよ」
「いいのっ!?」


私の言葉に1番に反応したのは幸村君だった。


「なまえ絶対料理苦手だと思ってたからさ、遠慮して言わなかったのに」
「何その絶対料理苦手論」
「何だ。じゃあ俺にもよろしく」
「幸村君いつも美味しそうなお弁当持って来てるじゃん」
「…あれ実は自分で作ってるんだよね……」
「嘘だね、幸村君はあんなにレパートリーないね」
「…いいじゃん!!親になんてどうにでも言えるし!!」
「どうにでも、って何ていうの!?」
「あ、そう。なまえは仁王には作ってきて彼氏の俺には作らないんだ。へぇー」
「いや、そうゆう意味じゃなくて!!幸村君のお母さんに悪いと思って…」
「大丈夫。彼女が作ってきてくれるって言ったら喜ぶよ」


拒否権なしスマイルは今日もフル稼動。
それにしても仁王君の偏食っぷりはすごい。
仁王君がちゃんとしたご飯食べてるのそういえば見たことないかも。


「仁王はご飯なくても生きてけるもんな」
「まったく。仁王君の偏食っぷりは感心できませんよ」
「いや、別に好んで食べんわけじゃなか」


「仁王君何か嫌いなものある?」
「にんじん、カボチャ、ナス、ピーマン、カリフラワー、ブロッコリー――――」
「そんなんじゃ仁王いつか死ぬよ」
「死なないもん…」
「好き嫌いなんてないよね?」
「…嫌いなものは嫌いじゃ」
「え?聞こえない」
「……ないナリ」


幸村君の拒否権なしスマイルで明日のお弁当には何を入れてもいいことになった。
気の毒だけど仁王君の好き嫌いを聞いてたらお弁当なんて作れなさそう。


「じゃあ明日作ってくるよ」
「楽しみにしてるなり」
「うん、しといて」



「何このカップルみたいな会話」
「間違えられるのも無理はないだろう」
「もっと部長も公にすればいいのにー」
「してるよ」
「彼氏以外にお弁当作るとか普通はありえないよな」
「丸井君はもし彼女が出来たとしても彼女以外からもお菓子をもらうでしょう?」
「当たり前だろい!!」
「うわっ、罪だね」
「…罪だな」


「…あれ、そういえば真田君は?」

『「あ」』











「はい、仁王君」
「おっ、ありがとな」


次の日の昼休み。
同じ場所に同じメンバー+真田君−幸村君が集まっていた。

朝5時起きで作った自信作を仁王君に手渡す。
早起き苦手でも今日は何とか起きられた。
目覚まし10個セット。


「へぇ、上手そうじゃん」
「色使いキレイッスね」
「頑張ったからねー」


仁王君は箸を持ち卵焼きに手をつけた。


「ん、んまい」
「ほんと?よかったー」
「ん?幸村はどうした?」
「委員会だ、とか言ってたよ。」
「…弁当は渡したんじゃろうな?」
「うん」


その時彼等が胸を撫で下ろしたのを私は知らない。
 

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