幸村君がテニスをしているのはもう何回も見たことがある。
当たり前に両手では数えきれない。

けど、きっとそんな私よりも幸村君のテニスを見てきた女の子達はたくさんいるわけで。
その中の女の子達によく思われなかったりするんです。











今日のテニス部の朝はミーティングらしく、見に来ても何の面白みもないから、と幸村君が言うので見に行かず、いつもより少し遅い時間に登校した。

普段の私なら幸村君の部活がないと知ってたらもっと遅く起きて登校していたはず。

だが、今回は別だ。
理由は簡単。
幸村君はさっきの話を朝電話で伝えてきたからだ。
朝から耳元で携帯が鳴り響き、起き、電話に出て、そのことを伝えられ、二度寝したが、眠れず仕方なく、なのだ。



1番乗りかな?なんて思いながら教室に入ると私の席の回りに女の子達が集まっていた。
なんだ、残念。


私が入ったのに気付くとニヤリと笑う。

「みょうじさーん、ちょっといーい?」


…また、これか。
この続きはどうなるのか知ってる。
多分いつもと同じようなパターン。
そして恋愛小説でもよくあるパータン。
人気者の彼氏のファンに呼び出されて危ない所をその彼氏が助けてくれるんだよね。
私助けられた事一度もないけど。
まぁ、しかたない。
幸村君に言ったこともないし、隠してるし。

最近は少なくなって油断してた。

彼女達が歩き出したのでそのまま立ち止まってると、彼女達は顔を歪ませて「来いよ」と言うので仕方なくついていった。



「なんでみょうじさんが幸村君と付き合ってるの?!ありえない!!」
「そうそう、あんたより可愛いい子もっといるし!!」
「幸村君もさぞかし迷惑してるでしょうねぇー」


これぞメンタル攻撃。
言い返す言葉もない。

毎回幸村君やテニス部のみんながいないところでばれないようにやるもんだからこっちも何のしようもない。
彼女達の私への罵声を黙って聞くしかないのだ。



「言い返してみなさいよ」


彼女達だって幸村君が好きだったんだろう。
好きな人に彼女が出来たらって考えると胸が痛い。


「別れてくれる?」
「それは無理です」
「はぁ?身の程わきまえろよ」


「そこら辺にしておけ」


突如聞こえた低い声。
何度も聞いた事がある。


「や、れ、蓮二君…」
「今立ち去るなら俺はこの場を見逃そう」
「…い、行こ」


柳君がそう言うと彼女達は足早に屋上から姿を消した。


「ありがとう、柳君。…でもテニス部ってミーティング中じゃあ…」
「ミーティング室からたまたまここが見えたものでな。俺が出て行った時は誰も気付いていなかったが」
「え゛っ」


手摺りから見を乗りだしミーティング室の方向を見る。
屋上とミーティング室って意外と近いんだ…。

ミーティング室の窓からはとにかく俯くテニス部員。
そして窓際にはこちらを見るようにして立つ幸村君の姿。
幸村君は腕を組んでむくれたような顔をしている。その回りにはもんもんと黒い何かが見えるようだ。


「み、見えるんだ…」
「呼び出しを受けた事を一度も直接精市に言ったことがないそうだな」
「…………」
「とりあえず今は教室に戻るといい」
「…………」
「フッ、じゃあ俺はミーティングに戻るとする」


「……まじか…」

そう呟くと私もダッシュで教室へ戻った。


 

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