「す、好きです…。彼女がいるのは知ってます…けどそれでも好きなんです…付き合ってくれませんか…?」


何が好きで彼氏が告白されてるのを見なければいけないんだろうか。
少しテニスコートに用があって、その途中通り掛かったとこで青い髪の彼氏と女の子を見つけて、目を見張った瞬間あの言葉。

けどもう慣れっこだ。

立海では噂の木の下。
あの人は何回あの木の下に呼び出されたんだろう。

そりゃ、彼氏があんな可愛い子に告白されてる現場を見たらすごく不安になる。
気持ちなんてころっと、変わっちゃうらしいから。

でも学習した。
ここで私がどう言ってもどうにもならないことを。

私はその場を通り過ぎてテニスコートへ向かう。


















「朝っぱらからよおやるのぉ」
「普通告白って放課後とか休み時間とかじゃね?朝とかまじねみぃーし」
「ま、そんな告白にも行ってあげるのが幸村ぜよ」
「なまえいるんだから行かなくてもよくね?」
「幸村は優しいからの」
「あー、そっか。優しいのかー」


私が隣にいるというのに…いや、わざわざ隣にきたのか。
部活も朝練が終わり朝のHRまでの自由時間。
私の席の隣とななめ前に座り込み最初の会話をする彼ら。


「どうじゃった?告白現場を見た感想は?」
「妬けちゃいますよね!!彼女として!!」


手をグーにしてマイクのようにし、私に突き出してくる2人。


「…もー、慣れた」
「嘘なんかついても無駄じゃよー」

ニヤリとする詐欺師。

「そうだぜ。正直に言ってみろよぃ」

ガムを膨らます赤髪。

「何やってんだよ、お前ら」

突如現れた青髪王子。


「おはよう、幸村君。さっきぶり」
「さっきぶりなり」


その2人に挨拶を返すと、私と目を合わせニコッと笑う。


「おはよう、なまえ」
「お、おはよ」
「今日朝練見に来なかったね」
「いや、それはー…」
「何?」


王子はまたにっこりと笑った。

行けなかったのには…理由があったんだし。
あんな告白見た後に顔合わせずらかったの。

しかもちゃんと行ったし。
影から見てたし。
…見たかったから。
……私、末期かもしれない…。


「あ、明日は行く!!」
「明日は朝練ないんだ」


そうなんだ、明日は朝練ないんだ。
思わずそう納得してしまう。

それより、今日の女の子はどうなったんだろう?
この調子じゃおっけーした……ってことはなさそう……だけど……


「もちろんだよ」
「あれっ?口に出してた…?」
「見たんだろ?朝」
「な、何を?」
「当たり前だけど振った」
「!!」
「俺には大事な彼女がいるからね」



話噛み合ってないけど、安心するのと同時に、幸村君の口から彼女って言葉が出るだけで嬉しくなる私ってつくづく単純だな、って思うんです。


 

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