「で海に行こうってなったんだ」
「どうしてそうなったの」


幸村君の急な発言により今週の土曜の部活は休みになり、海に行くことになったらしい。
勝手な幸村君に振り回されるテニス部は可哀相だ、と思ったが案外みんな乗り気なんだとか。


「だって今泳がなきゃいつ泳ぐの?……あ、それ言わなくていい」
「いや、言うつもりなかったよ」
「だからさなまえもいこうよ」
「今年は例年にまして暑そう」
「暑いから泳ぐんだよ」
「水着今年買ってないよ」
「じゃあ買いに行こっか」
「え、」















「海に気持ちいいな!」
「確かにそうだ」
「あれ?なまえは?」
「お待たせー」


砂浜は大分歩きにくい。
それでも走ってみんなのところに行った。
みんなテニスで鍛えてるだけあって腹筋が眩しい。
まぁ、一人を除くんだけど。
それにくらべ私のこのお腹のお肉。どこかに捨ててきたい。



「あれ?幸村君は?」
「精市なら仁王となにか取りに行ったが…」
「なまえの水着見るのが恥ずかしくて逃げたんじゃね?」
「それはないよ。一緒に買いに行ったもん」
「一緒に買いに行ったんスか?!いやー…」
「うわー…」
「な、なによ」

「あ、なまえ」


そんなところでバックやらを持った幸村君と仁王君が戻ってきた。


「やっぱりそれにしてよかったね。似合ってる」
「そうかな…?ありがと」


「なんかカップルっぽい会話してるぞ」
「絶対あの水着幸村先輩の好みッスよね」
「好きな色水色って言ってたもんな」




あのあと幸村君と水着を選びに行った。
幸村君と水着を選んでると店員さんが声をかけてきて「一緒に選んでくれるなんていい彼氏さんですね」なんて言われちゃったけど、本当は、ほぼ強制的に連れてこられただけですから。なんて言えなかった。

「こっちとこっちだったらどっちがいいかな?」

って会話を何回繰り返したかわからない。
しかもおかしいのがその質問をしたのが私じゃなくて幸村君ってとこ。普通逆だよね。
何軒の店を何時間くらい回ったんだろう…。
でも正直楽しかったりもした。



「なまえ?」
「あ、ごめん。何?」
「泳ぎに行こ」
「うん!」


ここまで来てしまえば暑いなども言ってられない。
幸村君って私を納得させるのがすごいうまいと思うんだ。





「えー、せんぱーい、競争しましょーよー」
「そんな可愛く言っても無理!お腹も空いたし疲れた!」
「じゃあ俺買ってくるッス!」
「ほんと?じゃあおでんよろしく。お金後ででいいー?」
「いいッスよー」


赤也君は砂浜を爽快な走りで駆けてった。
幸村君はというと、さっきまで泳いでたけれど疲れたのか浮輪でぷかぷか浮いている。
何してても様になるのが尊敬する。

「せんぱーい!」

両手にスチロールの皿を持って走ってくる、赤也君。
すごい可愛い。


「ありがとー!はい、お金」
「え、いいッスって言ったじゃないッスか」
「え、そっちのいいッスですか」
「そっちッスよ」
「でも後輩に奢らせるわけにはいかないから、はい」
「えー、いいッスよー」


お金のなすりつけあいをしていると目の前を綺麗なお姉様のグループが歩いてきた。


「あそこの子達すごいかっこよくなぁい?」
「うんうん!みんなレベル高ーい」
「さっき海の家でおでん買ってる子もかっこよかったよ」
「あー!それ思ったー」



「「…………」」

「よかったね、赤也君」
「あ、ありがとうございます…」

しばらく動きがフリーズしてた私達だが、先に覚醒した私が赤也君のポケットにお金を入れておいた。

「あー!先輩何してるんスかー!!」

「楽しそうなことしてるね」

「あ、幸村君。もう浮輪はいいの?」
「なまえかまってあげようと思って」
「私には赤也君がいるもーん」
「先輩嬉しいこと言ってくれるッス…って痛い痛い痛い…」


幸村君の手で赤也君の頬を抓る。
利き手で抓るとかやめてあげてよ…。


「赤也、浮輪貸してあげるからあっち行っておいで。柳がまってる」

「ほんとッスか!?それを早く言ってくださいよー」


幸村君手を離した瞬間に赤也君は柳君のほうへ走って行った。
赤也君って本当に柳君好きだよなぁ。
お姉さん少し悲しいよ。


「海、入らないの?」
「今おでん食べてるから無理」
「大根ちょうだい」
「半分ね」
「えー」
「昆布なら全部あげる」
「じゃあ大根半分と昆布ちょうだい」
「増えたね!?」


幸村君の口に半分にした大根を突っ込んでやると一瞬困った顔をしたがすぐに対応してみせた。


「一気に入れんなよ」
「幸村君ならいけると思った」
「罰として海浸かりにいくよ」
「ふふっ、罰になってない」


手を引かれ海へと歩いてく。
幸村君と入る海はさっきまで見ていた海とまた少し違って見えた。
 

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